失われた情熱へのオマージュ。
満場を埋め尽くす大観衆。
球場で繰り広げられるのは死闘。
どのくらい死闘かって、2人なら軽く死ぬくらい。
野球漫画で試合中に人が死ぬ漫画見たのは初めてですよ。私。
なんの話かって、「アストロ球団」の話なんだけどね。
アストロ球団(原作:遠崎史朗 作画:中島徳博/集英社)というのは、今から30年位前、1972年の秋あたりから週刊ジャンプで4年にわたって連載された、驚異的なプロ野球漫画だ。なんで30年も前の漫画を知ってるかっていったら、太田出版様がばか高い値段をつけて復刻してくれたからで、それを読んでしまったからなんですね。
でもこの漫画に最初にであったのは、「コミックVOW!」なんですよ。
VOWではいろんな漫画が取りざたされてましたが、これほど注目回数の多く、衝撃的な漫画はなかった。なんというか、一冊1900円の復刻版5冊を見つけて買おうと決意するくらいは衝撃だった。
VOWって見た目に可笑しいものを取り上げるじゃないですか。
記憶に残るのは、何故か人が6、7人くらい意味も無く空から落ちてくる「人間ナイアガラ!!」という技と、ボールで敬遠されてどんどん真っ白に燃え尽きていく男の絵。そして、試合中倒れた男の周りに皆が集まって心配しているのに、そこに行かず画面手前で一人なよなよしたポーズを取っている男の姿。
最後の決め手で、アストロ球団の新天地がアフリカであるとし、皆が希望に燃える顔のバックで「アフリカ!」と踊る力強い文字。
しかも9人全員が希望に燃えてるかと思えば、よく見ると3人くらい複雑な顔をしている奴がいたりしてこりゃまた笑える。
とにかく私が気になったのは、
1.「人間ナイアガラ」という技は一体なんの役にたつのか
2.男くさい連中のなか、一人長髪でなよなよしてる男は何者か
3.球三郎・球六のすごい分身守備ってなんのためか
4.位牌を逆さにして頭に巻きつけてる漢は一体何か
5.何故希望の新天地がアフリカなのか
という点でした。でも、もうこんな漫画見れないだろう。
そうやって諦めていると、世は空前の復刻ブーム。この漫画も例に洩れず復刻される算段となっちゃったみたいなんすよ。そりゃ買わなきゃいかんだろ。
で。
実物を目にするまでは、私、この漫画が単なる熱血漫画というか、単なる熱い漢の漫画なんだと思ってたんですね。昔のジャンプ漫画ってこういうの多かったじゃないですか。昨日の敵は今日の友だし、よくわからん必殺技をあみだすし、気力と根性で敵をねじふせるし、しかもどことなくかっこいい漢たちがよってたかって戦って悶えてるのを見るのはちょっと面白い。
でも。
なんというか、アストロ球団はなんかおかしい。
もう設定から変。
でもまあ、こーいう強引なのも百歩譲って受け入れよう。実際どの熱血漫画だって設定が妙なものだ。アイアンリーガーだって妙だったし、ムサシロードも変だった。
話は単純に言えば3部構成になっいて、
「ブラック球団編」「ロッテオリオンズ編」「ビクトリー球団編」
という形になっている。
見てのとおり、この人たちはロッテと戦ってるんですわ。何故か?これがプロ野球漫画だから。
漫画が描かれていた時代はちょうど、現在の長嶋監督が現役の頃だ。巨人の強さは絶頂期らしく、どの球団もが巨人の独走状態を潰そうと画策していた。もちろん、まずは日本の野球界から制覇しようと思っているアストロは巨人打倒のために立つ。
が。
確かにお互い敵として認識しているものの、最後まで彼らは戦わなかった。全然機会に恵まれなかった。むしろ────戦わせることを忘れていたんじゃないかと思われる。
漫画の第一回は華々しい巨人の試合から始まっているのに。
対阪神戦、投手江夏は事故で入院中、そこに江夏になりすましてやってきたのは、第一のアストロ戦士「宇野球一」。彼は出てきた瞬間、凄まじいまでの能力を見せてくれる。アストロ戦士は超人である。まだまだ弱いから猛特訓、なんて事態は起こらないらしい。
ここで派手に登場したシュウロと球一、アストロ球団設立を表明、日本のプロ野球界に新たな球団を作るという大きなことを言い始める。
話が始まり、試合も行われる────はずだった。野球は9人でするもので、9人の戦士がどこかにいる以上、彼らはまず9人集めることから始めるのだろう。そう思った。
なのに、現実は仲間は見つからない、巨人とは試合しない、あまつさえ復讐球団・ブラック球団などというプロ野球界とは全く関係ない団体と試合をしてしまうことになる。我らが巨人軍の有名どころは、ストーリー進行上における説明役となりさがり、よくわかんない試合が展開していく。
殺人X打法やら殺人L字投法などというどう考えても殺すこと前提の技、それに立ち向かうのは球一の魔球3段ドロップ、そしてジャコビニ流星打法だ。なんなんだ、その妙な技名の数々は。
そして、記念すべきこの第1戦で、球ニが死んでしまう。びっくりでしょう。アストロ球団の一人なのに、これじゃ彼らの夢はどうなるんだ?と思いきや、彼らに憧れマネージャーとしてつきまとっていた小児マヒを患う少年が球ニの死に怒ると同時に雷にうたれ小児マヒが回復、手の平にアザがでてきて「彼こそが本物のアストロ戦士だ」ということが判明するのだ。今までの球ニは実は偽者で、本物は別にいたのだ。このときの演出は感激しました。漢の世界ですよ。
まあそんなこんなでしょっぱなから波乱含みの展開ですが、ブラック球団にアストロナインの一人(カミソリの竜)がいたり、勧誘して断られたり、皆怪我をして死にそうになったり大変だったが、まあ、どうにか勝利はした。
そんなこんなしてると、プロ野球界でこのアストロ球団を危険視する声があがってくる。
最初に彼らと戦うのが、アストロ球場のフランチャイズ権をかけて戦うロッテだ。
勿論ロッテの人たちは超人ではない。勝ち目はないのじゃないか?
そんなことはないのだ。ロッテの金田監督は超人っぽい人たちを連れてきてメンバーに加え、アストロ打倒に向けて燃える。
この試合でも、超人っぽい人の一人、ロッキーの怪物モンスタージョーがホームランになる球を取ろうとして無理をし電光掲示板に激突、壮絶な死をとげた。それにもう一人の懐刀、剣道をやっているということで鋭いバッティングをするらしいリョウ坂本も球一のおかげで再起不能な怪我をおう。
対するアストロナインも、出鱈目な相手の超人ぶり、金田監督の陰謀等に振り回され球七は怪我(最後らへんでは立つこともできない)、球一も魔球の投げすぎとかで鎖骨まで折って再起不能っぽく、金田監督をして「あいつらキチガイか?」と言わしめる泥沼のやけくそ熱血試合を展開してくれる。
この人たち、本当にどんなに怪我をしても試合にでるのだ。
球七がいい見本だ。それはのちのち立証されるが。
そして球一がもうバッターボックスに立つのもやっと、という状況になって初めて、球場には来ていたらしい7人目のアストロナイン・勧誘を断って姿を消していたカミソリの竜が現れる。竜だってどー考えてもわかってんのに、その正体を明かすまでに8ページくらい使ってるのが剛毅な話だ。週刊連載なんだから、もうちょっと考えてページつかってくださいよ。
まあ、彼の出現・コホーテクすい星打法で辛くも同点、そして球三郎のヒットで逆点してロッテになんとか勝つ。
けども、そんな彼らいうところの「一試合完全燃焼」する試合、こんなものはまだまだこれからの加速するわけわからん展開に比べればまだまだ序の口だったのである。
対ロッテ戦でマジで戦慄したプロ野球界は、アストロ抹殺のための策を練り始める。そこに現れるのはアストロナインの一人にも係わらず、それに加わることはせず逆に潰してやろうという意識に燃える峠球四郎だった。
アストロを潰すのではなく、マジでぶっ殺そうと計画を練る。
彼はアストロに宣戦布告、上の人たちの怒りを無視し「ビクトリー球団」なるものを設立する。それは各スポーツ界で才能はあるのにはぐれ者になっている選手を発掘してきて素人を叩きなおして野球をさせるという計画。
その指南役にある古武術の大家を連れてきた。
その大家・伊集院大門は球三郎の実の兄であり、ある理由で弟を心底憎み殺そうとしているような人だったのだ。
ここからがちょっとおかしい。
危機感を感じた球三郎は、皆に特訓するよう促す。そして、大門は必ず球一を狙ってくると考え
「攻撃を受けたとき急所の少ない背中で受けるのが一番安全」
ということで、山の中で球一の背中に大木をぶつける修行を始めていた。
背中を打ったら鍛えられるわけ?まあいいけど。球三郎様のすることだし。
球七・球八もそれぞれ特訓、球六も素敵なバットを作りに出かけた。
背中打たれる修行を終えた球一はこれだけじゃ駄目だ、ということで新しい魔球の製作にとりかかる。
そこでとられた方法は、「稼動する電気キリ(っていうのか?)」を握ることで自分の手の平に傷をつけることだった。────っていうかさあ、試合までそんなに日にちもないのに、怪我してていいのか?
球五はアストロ球場の地下に作られた秘密重力特訓室で修行に明け暮れる。
それぞれがそれぞれの万全の態勢で対ビクトリー戦を迎えた。
巨人もプロ野球ももうどこか星空の彼方へでもおいやり、試合は野球というよりも殺し合いの様相を呈していた。
まず最初に燃え尽きたのはビクトリーのピッチャー氏家慎次郎(疑問4の人)。
この人の燃え尽き方は尋常じゃない。いやもうこれは、本編見てくださいとしか言えないですわ。私こんなに真っ白に燃え尽きた人初めて見ました。
次に球六の打球を素手でカバーしようとし再起不能になるのは、元ボクサーのダイナマイト拳だった。
しょっぱなから飛ばしてくれます。
その中でも大門・球三郎兄弟の確執は続いてます。なんつーか、2人の過去を小出し小出しに見せてくれるんですね。思うに、なんだかかっこいいらしい球三郎は現実に多くのファンがついてたんでしょう。
対ビクトリー戦とはいっても、なんだか兄弟戦争という事実も多く伺え、一体誰が主役なんだよ、とちょっと思います。
さて。
そんな試合をしていると勿論アストロ側にも怪我人続出。
球五は打球をくらって医務室にいったまま帰ってこない。やっぱこいつか。
球一も頚動脈切れそうな事態に陥るがなんとか大丈夫。球八も卑怯な守備に血まみれになるが、どうにか試合に出ている。
彼らには交代する選手がいないんだから、怪我したってでるしかないのだ。本当は。
こうした血みどろ野球の結果何が起こったかといえば、「やっぱり血みどろ野球はいけないよ」という空気。アストロ抹殺(ひいては球三郎抹殺)のためにメンバー入りしていた大門にはつらい空気だ。
そして一応の「爽やか野球」を促すため、球四郎の懐刀、ビクトリーの頭脳として唐突に試合に参戦してくるのは、もう何人なんだかよくわかんないバロン森という人。
バロンという名の通りハイソな感じで、ユニフォームに着替えるために素っ裸になって香水をふりかける彼の1ページぶち抜きの勇姿は圧巻です。もう、彼の出てくるひとコマひとコマが今考えると笑いと感動に包まれてました。
バロン森の参戦とともに試合の流れは一変します。
もうここから終盤一歩手前まではバロンさんの独壇場ですよ。
あんなに強く恐ろしかったはずの大門さんはこけにされ馬鹿にされ、自分の存在意義を見失いかける。自分の生きる糧はもう球三郎抹殺しかない。
彼の歪んだ憎悪に立ち向かう我らが球三郎。
この兄弟の過去は複雑怪奇だったが、その怪奇さ加減を助長するのが大門がずっと誤解している1つのこと。
彼は、「自分が父の実の子ではなく、本当の父親はそいつに殺されてしまっていて、実の子じゃないから父にないがしろにされてるんだ。だから後取りも球三郎になりかけたんだ。ふんがー」と思っていたが事実は逆で、球三郎が実の子ではなく、その父を闇討ちで殺してしまったことを引き取った父さんが後悔していて甘やかして育てていただけだった。
その複雑な事情を知ると、今は歪んでいるが実はまっすぐな心の兄さんは死を選ぶかもしれん。だから事実は僕の胸のうちにそっとしまっておこう────なんて泣ける決意をしてバッターボックスにたつ球三郎。
一塁には大門がいる。
今ヒットを打って一塁に行けば必ず殺される。
しかし彼はヒットを打った。
その一塁までの道のりに襲い掛かるのは、大門からビクトリーに伝授された凄まじき技!古武術の秘術、「人間ナイアガラ!!」だ。
なんか、6人くらいで一塁線上にとびあがり、走ってくるランナーの頭上めがけて上空から順番に蹴りわいれるというある意味すごい技でした。これってランナー妨害とか、反則になんないの?
・・・でも、すごいよな?一個謎がとけたっつーか。
まあそのどさくさで大門の誤解はとけた。今までの「黒大門」は散っていき素敵な「白大門」へと変化する。ほんとに散っていきましたよ。黒いトーンが。
爽やかになった大門は顔つきからもう一変する。正義の漢だ。
そして彼は人生最後のバッターボックスへと向かっていく。
彼はここでホームランを打つわけだが、その際「かげ腹」をして打席にたっていたのだ!服の下には詫び状という名の遺言状がしたためてあった。いつ書いたんだそれ。
今までの自分の暴走振りを詫び、球四郎に「デスマッチ」としての野球の成果をあげられなかったことを詫び、最終的には「正々堂々プレイした方がいいんじゃないか」という文章が書かれてあった。
ここで大門の死に直面し、一番燃え上がったのはハイソなバロン森だった。
今までの「狡猾・卑怯・自分の手は汚さない・大門を馬鹿にしっ放し」という態度から一変、漢の中の漢へと成長していく(ように私には見えた)。
バロンに押されるようにビクトリー側が発奮していく中、一人球四郎だけが動かない。むしろ情けない。
それでも試合は進む。
怪我人は続出した。
球七は自慢の足に痛みが走り、球三郎は自慢の耳がきかなくなり窮地にたち、球一も疲れのためか球威が落ちていく。球四郎はいつのまにか正義に目覚め、一試合完全燃焼というアストロナイン的意識に目覚め、最後の秘球をひっさげてマウンドにたった。
そんな中やっと球五が復活。そのときにはどちらの球団も全員がぼろぼろの状態になっていた。
球七は足の痛みを飛び越え、アキレス腱が切れる(!)という大惨事。意識を失いかけるもそんなことでベンチに引っ込むようなら本物の超人とはいえねえ。守備はする、打つ、走る、こいつら人間じゃないと思う。
で。
ここで、思いもかけないアクシデントが発生する。
ファインプレイで球をとろうとしたとき、ひどく壁に頭を打ちつけていたバロン森の頭に激痛がはしる!
どうなるんだ?こいつもまた再起不能か?
どきどきしていたら、この人、次の打席でホームランをうち、あと一歩でホームベースというところで立ち止まってしまう。皆が不思議がる中、鼻と口から血を噴き出しながら倒れこんだ!
そしてそのまま殉死。
────つらい。けっこう好きだったのに。
バロンの死で皆がさらに発奮する中、ついに最後の超人・球九郎が現れる。
唐突に現れた兄ちゃんは「どっちかに味方してやるよ」と軽く言うが、球一、球四郎、両チームリーダーの逆鱗に触れたらしく、「そんなどこの馬の骨かしらんヤツに入ってもらわんで結構!自らにたのむ、それが超人だ!」と断言、試合はそのまま続行された。
そこからの展開は、まあ、この漫画にしては普通の展開。それでも異様なことに変わりないけど。
終わり方もあっけなく、今まで全く出てこなかった球五の打席、フォアボールで押し出しの一点をとられビクトリーは負けた。それでも、なんとなくいいと思う。死力を出し尽くしてしまってて、ボールが4つでるくらい当然の体力みたいだし。
この派手な、恐らく現実として2年越しくらいの試合が終わった後、物語は加速度的に終息していった。
プロ野球界はアストロ球団の追放を決定。これでもう試合ができない。
その措置は巨人軍・長嶋も一枚かんでいる。彼らの理論はこうだ。
「アストロ球団は20年早く生まれすぎたと思う……彼らの力量は今のプロ球界の規則…秩序から大きく逸脱している!!そんな彼らの力量を受け入れるだけの土壌を我々は……いや全世界のプロ球界はもっていないのだよ!」
要するに、恐ろしいから排除してしまえということですわ。
彼らにとってみれば当然の選択肢だ。権力をもっているのだから自分たちを危険にさらすものは防ぐことができる。
とばっちりはアストロ球団の方だ。
折角心を入れ替えた球四郎、そしてやっと出てきた球九郎、ともに権力に反発するが勿論聞き入れられず、アストロ球団悲願の全メンバー揃うももうすでに解散の危機。
そこでシュウロは切り出す。
プロじゃなくても野球はできる。いつか世界が自分たちに追いついたとき、夢を叶えることができるだろう。その為に自分達は世界へ旅立つのだ。より力をつけるために…!
そうして提示されたのが、「アフリカ」だった。
「アフリカのマサイ族が作った野球チームと戦うのも悪くない」
というシュウロの話で、皆が希望を持って「アフリカ!!」と感動してる。
はあー、だからアフリカね。そうか。
こうして、アストロ球団は世界に飛び立ち物語は幕を閉じた。
物語としては結構うまくまとまっていると思うんですよ。このまま彼らが球界に受け入れられペナントレースに参加していけたとしても、漫画自体その全てを書ききれるとは思えないし、現実として一試合完全燃焼を座右の銘とする彼らが一年間五体満足で過ごせるとは思えない。
世の中に超人っぽい人がごまんといるようだし。
だから物語がメンバーを揃えたところで終わるってのもいいと思う。「X(CLAMP)」だと10巻で話が終わる感じ?これからの世界に希望を持ちつつ終わるっていいと思うよ。
でもその終わり方────何故球界から追い出されたか。その理由がちょっと私の中でつっかかる。
復刻版には5人の人が解説を書いてる。一冊に一人ということね。
その人たちの文も含め、私が読んで感じたことは「時代に押し潰されちゃったのだな」という一点につきた。
作者と漫画が一緒に燃え尽きたという話もあった。確かにそうだ。燃え尽きたんだろうよ。
でも、その燃え尽き方が、
「権力には逆らえませんでした」
というところが泣かせるなって思って。
多分この漫画がかかれてた時代の少し前でも後でも、こういう理由で終わりを迎えるってことはないんじゃなかろうか。この人たちはすごく諦めがよく、違う希望を見出して旅へ出たが、違う時代ならもう少し権力に楯突いてたんじゃないだろうか。
これを見てると「王立宇宙軍〜オネアミスの翼」のラストを思い出します。
軍の攻撃が始まったので打ち上げ場から退避しなさいという勧告に、老境の責任者は従おうとするが若者たちは反発し、「絶対飛んでみせる」と叫ぶ。
この責任者ってのは、アストロ球団世代っぽい気がした。よくわかんないこと言ってるけど、だぶってしまったもんは仕方ないやん。
私の世代────アストロ世代以後の人たちには、もう、こうした熱血な漫画ってかけないと思うし、また発表されてもギャグとしてとられるだけで真剣に見る人っていないだろう。島本和彦なんて、世が世ならシリアスで売れてんじゃないかなーとたまに思うが気のせいか?気のせいだな。
これが書かれていた頃────夢も体制に対する文句を持つにも係わらず、泣き寝入りしなければならないと皆が悟り始めてしまった頃。60年代の安保闘争を経て、権力にはやっぱ逆らえんと皆が思っちゃったあの頃って感じなんじゃないでしょーか。
だから皆、諦めが良い。
だって権力には逆らえないもん。
ちょっと悲しくなっちゃいました。私。
情熱、熱気、今の漫画にあんまりない部類の単語。力強い線と、意味のわからん必殺技と、漢らしいセリフの応酬。
「…よくいうでやんしょ…」なんて普通使わんがな。実際。
失われた情熱、それは権力には逆らえんと悟る歴史の中で必然的な現象だったのかもしれません。
やる気の無い世代の一人として、ちょっと憧れつつ読み進めてみました。
────いかがなもんでしょうか?
おわり。
ところでオマージュって使ってみたんですけど、正確な意味はなんですか?