ポンキッキ学習ビデオに関する傾向と対策
第一巻「こんなときなんていうの」
ということで始まりました、ビデオについての考察です。
前回は、ビデオ全体の印象について触れました。なんかもの足らん、という要旨になっちゃってましたが、それはビデオの主旨の都合上仕方ないということで解決しましたので、気を取り直してやっていこうと思います。
────と言いつつ話を蒸し返しますね。
物足らんというのは、内容が勉学に関する教育ビデオ一辺倒であったことからに対する印象でした。
本来の番組では内容の一要素としてある「勉強」を、そこだけ純粋に抽出したものであるからこその感覚です。やっぱ私たちはあの番組の歌や出演者、感性に訴えかけるコーナー等をひっくるめて好きなのでありまして、ある一つのものだけを延々と見せられてもちょっとした不満が残るのじゃないかと思うのです。
それが今回教育ビデオだったから、「教育ばっかで物足らん」という話になるだけであって、他のスポット特集や歌だけ、兄さんたちだけ、トーマスだけのものを手に入れたとしてもやはり不満は残るでしょう。
30分(45分のときもあったが)の番組として作られた、あのバランスはやはり素晴らしいということですね。
ってことで。
前回の弁解は終わろう。なんかもう見苦しいったらないわね。
で、ビデオの一巻ですが、タイトルは「こんなときなんていうの」。
こんなときなんていうの。
・・・・・・・・・ああ、これを聞いて思い出すことなぞ一つしかありえない!
こんなときなんていうのおじさん!こんなときなんていうのおじさんが入っている可能性が素晴らしく高い!!
否が応にも期待は高まる!ポンキッキ史上一二を争う私の思い出のスポットだ。興奮するなという方がどうかしている!ああもうどうしようこんなときなんていうのおじさんが────って、待て待て。オーケィ、落ち着こう。
そこばっかに目がいってたら大局を見失う。
つーことで、早速ビデオを見てみよう。
今回からは内容の詳細と適当な感慨が主になりますので、以下は結構長々いくかもしれませんよ。
内容としてはまず、
1.「ガチャピン・ムックのジャングル探検」
ってものからスタートする。
テーマは「なぞなぞ」ってなってんですが、どっちかって連想ゲームというのが正しいんじゃないかと思います。
ガチャピンが平和に双眼鏡のぞいてるところに、「助けてー、あそこにおそろしいものがー」というムックの登場から話は始まる。恐ろしいものがと言ってんのに、「どんなどんな」とガチャピンの声には緊迫感がない。むしろ楽しそう。まあ目の当たりにしてないし、当たり前か。
で、
ム「歯をむき出してすごく怖い顔なんですよ」
ガ「え、じゃあワニだよ」
ム「毛がもじゃもじゃしてるんですよ」
ガ「毛?ライオン?」
────というようなやりとりが続いていく。最終的にガチャピンは「熊が風邪ひいてんだ」とかよくわからんことを言い出し、結局当てる事のできないまま変に生々しいゴリラの登場で話は終わる。
「ゴリラじゃんー。なんでそれを早く言ってくれないんだよー」というガチャピンの台詞がなんとも言えん。
早く言ってくれてたらどうしてたんだ。逃げてたのか?っつーか、お前が連想していた動物たちにしろ、当たってたら早く逃げなきゃいけんものばかりじゃないか。まあいいけど。
このムックがゴリラについて語る表現方法(解説ではなぞなぞと言われる。ま、「毛がもじゃもじゃしててウホウホいう動物なーんだ」ってなことなんだろう)、これを学ぶことで物事を理解し表現するのに適切な情報は何か取捨できるようにってのを学ぶらしい。
そうね。伝えられる情報が間違ってるんじゃなぞなぞが成立しないし、社会生活もままならんわな。
表現方法を学ぶのになぞなぞが有効である、ってことは結構なぞなぞってバカにできんな・・・・・・という勉強になりました。子供のなぞなぞには付き合ってやらんといかんみたいだ。
しかし私にとって、このコーナーの特筆すべきとこはゴリラの生々しさでした。どんなゴリラだったかは、ここの下の方に映像あるんで確認してください。
別に大人の私にとってはフツーなんだが、このビデオにここまで生々しいものが出てくるとはちょっと思ってなくて驚いた。
製作者の力の入れ方が侮れん。
2.「しりとり」
しりとりするものよっといで、という声に合わせてワニ・ニワトリ・リスが札を抱えて現れる。
ああ、ここの動物で既にしりとりになってんだな・・・・・・と落ち着いていたらいけない。彼らは本来しりとりとして使われる、かがみ・ミルク・くるみに合わせて札を抱えて「み」「く」と平仮名を示す役割を担うだけなのだ。
んで最後「くるみ」で終わった後、がらがらがら〜とモノが降ってくる。
←こんなように。
それに合わせて「みのつくもの、あった?」と聞くわけだ。
ここで全部名称を答えられるようになるってのも一つの勉強だよな。
ま、全部「み」がつくわけなんだけど、なにより気になるのは「みのつくものってこんなにあるんだ!」みたいな純粋な驚きではなく、「かがみ・みるく・くるみ・・・・・ってみ攻めかよ!」というどうでもいい感慨です。
私、しりとり苦手なんすよね。
どこかの会社の入社試験でしりとりをしろ(絵付きで)って問題があって、なにやっても観念的な言葉か「ん」がつく単語しか思い浮かばず、仕方ないので「ん」の言葉の後に「ンドゥール」って書いたことがある。それくらい駄目。試験は落ちました。人生で最もどうしていいのかわからん思い出です。
3.伝承あそび「花いちもんめ」
2007年1月のカレンダー画像に使ったアレ。
これは花いちもんめです、という説明等全て置き去りにして野菜・果物たちが花いちもんめをやっていく。
この「全て置き去り」というのがたまらなくいかしてる。
勝って嬉しい花いちもんめってやつっすね。ナスちゃんとモモちゃんがじゃんけんして、ナスが勝って、モモは相手チームに引き抜かれそして再び・・・・・・というのをただ流すだけ。
ちょっとシュールです。好き。
今の子供ってこーいうの知ってんのかね?知らないことのないように作られたものなんだろうか。
なんかさー、この子がいいって選んで次々減ってくわけじゃん?この遊び。指名されるのってやっぱ人気者の子が圧倒的に多いよな?
────こーいうのはいじめに繋がるざますわ!
ってなことを言う親っていそうじゃね?故に最近のお子様は知らなさそうなそんな感じがする。実際の現状を知らんので適当に言ってますが、伝統的な遊びが廃れてくのは悲しいものですね。
4.プゥちゃん こんなときなんていうの「ありがとう」
さあ、このコーナーのためにこのビデオがあると言って過言ではないモノの登場だ。
まず現れるのが、人好きのする笑顔を四角い顔に浮かべた、我らがこんなときなんていうのおじさんだ。
自分で「はははははは、ご存知、こんなときなんていうのおじさん」と自己紹介するから侮れない。もう大好きですこの人。
今回は、可愛らしい王子様(プゥちゃん)がロバに乗って悪い怪獣をやっつけに行きます。行くのだが、王子様では直立するプテラノドンのような怪獣には勝てない。むしろ鼻息で吹き飛ばされた上に食われそうだ!
やばい!死ぬ!
そのとき。
ウルトラマン然としたヒーローが登場!かわりにやっつけてくれるのでした。
さあ助けられた王子様。
仁王立ちで何かを待つヒーローに対し────「こんなときなんていうの?」とおじさんが王子様に耳打ちしてくる。
←ああもう、この世界の人々皆可愛いっ。
なんていうのか?
「ありがとうでいいの?」王子様はおじさんに確認し、ヒーローに御礼を述べる。ありがとう、と。
ヒーローは「どういたしまして」と告げ飛び去る。
良かったねえ。
ああ、なんていい話なんだ。怪獣を倒してからすぐに颯爽と帰ろうとせず、王子様からの御礼の一言を聞くためだけにずっと待ち続けるヒーローの姿勢はこの際おいといて、「こんなときなんていうの」って言葉がこんなにもすごい威力を発揮するシチュエーションは他にない。
この、「自分で考えさせる」って方向性がいい。
1人に一匹こんなときなんていうのおじさん。
こんなに年食った今でも私にはきっとこのおじさんが必要で、このおじさんに「こんなときなんていうの」と囁かれたらきっともっとマシな人間関係を構築できるようなそんな気がする。
しつけというだけではない、何か奥の深い人です。このおじさん。
冒頭、「はははは」などと笑いから入るその人格も、かなり私にはツボだ。こんな人になりたい。なれないけど。
プゥちゃんシリーズの中で、こんなときなんていうのおじさんが最高峰だと考えるが・・・・・・どうだろうか。
5.世界のことば「ありがとう」
世界のいろんな国の子が、「ありがとう」と母国語で言い続けるだけ。ゴダイゴの「ビューティフルネーム」の曲にのせて。
それだけなら別にすごくもないのだが、日本・西ドイツ・インド・フランスときてアメリカでもイギリスでも中国でもなくシエラレオネの子が登場するのであまりのすごさに腰を抜かすこと請け合い。
西アフリカにある国ですが(今Wikipediaで探した)、なんか、「ポンキッキはどの国にも媚びません」みたいな意志が勝手に感じられて好き。
ナレーションがムックっていうところも好感度高い。
グローバルっつったらこのくらいせんといかんのですよ。
6.位置指定 卵を産むのはどのにわとり?
上に4羽にわとりが並んでいて、下に卵を受け止める受け皿が一つ用意されている。
卵を産むのはどのニワトリ?のあと、「左から2番目」って言葉が入り実際そいつが産んで下で受け止めるということになる。
「この」「あの」と示すのでなく、「左から2番目」と表すことが重要。
位置指定をする第一歩です。
7.連語
「これは僕のりんご」
「これは僕のりんごをかじったねずみ」
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫」
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫の尻尾をふんづけた犬」
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫の尻尾をふんづけた犬がくわえてきた棒」
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫の尻尾をふんづけた犬がくわえてきた棒を切ったのこぎり」
@
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫の尻尾をふんづけた犬がくわえてきた棒を切ったのこぎりを持っているおじさん」
「これは僕のりんごをかじったねずみを捕まえた猫の尻尾をふんづけた犬がくわえてきた棒を切ったのこぎりを持っているおじさんのりんご」
A
絵にのせて、上記のことをずっと言っていきます。
ずっとです。
連語というよりどこまで覚えてられるかな?ってな知能テストの匂いもする。
ここまでされると、いい悪い長いってことよりここまで続けたことにただ感心する。
ちなみに@及びAのとこで、喋っているらしい少年の顔がうつり、溜息とも息継ぎとも休憩ともつかぬ「はあ」ってつぶやきをもらすのが良かった。そりゃこんだけ喋らされたら疲れるわ。
あの一瞬がなかったらただ長いだけのうざいものに思えたかもしれないが、少年の「はあ」が全てを和ませた。
すごい。あの間はすごい。
わかってるなあ、製作者。
8.「あめ」のつくもの
あめふり
みずあめ
あめんぼう
「あめ」って文字の入る単語の羅列です。
一つの単語に別の単語がまざってるってことの解説も含むらしい。
ポンキッキではこういう言葉遊び的なものはちょくちょく見かけてて、番組として見てると面白いんだけど、こうも勉強的内容が続くとそのスポット内における目的が表に出すぎてるような感じがしてちょっと鼻についちゃうなってものの代表。
子供たちはこういうとこから、単語と単語がくっついて別の単語ができているって世界の仕組を知るのだろうか。
9.位置指定2
前述のにわとり云々の位置指定の進化形。
公園で「チンパンジーものがたり」とかいう本を読んでるムック、背中がかゆくなったので通りかかったガチャピンを呼び止めかいてもらうことにする。
けど、うまくポイントにきてくれない。もっと上、もっと下、右右左と注文つけてたらガチャピンがキレた。そんなんじゃ全然わかんないからもうやめた!・・・・・・ってなもんです。もっとつきあってやれよ、緑。しまいには「自分でかけばいいでしょ自分でー」と言い始める始末。
なんて冷たいヤツなんだ。
ムックならもっと付き合ってやってるはずだ!・・・・・・という明後日な感慨はこの際関係ないのでおいといて、遊びに行きたいのにとキレるガチャピンをなだめつつムックは新兵器を持ってくる。
というか身に着けてくる。
升目の入った布だ。
その升目で「上から2段目の左から2つ目」というだけで、どうだ、かゆいポイントに辿り着いたじゃあないか!
位置指定をする有効手段として、平面の位置把握として、いろいろと使えることでしょう。
なかなか高度な勉強だと思うがどうだろう。そうでもないのか?
10.ごあいさつのうた
歌い手 THE ALFEE・池田典代
ラストは、歌です。
このビデオ、大体全部歌で締めるんだけど、1巻に選ばれたのは「ごあいさつのうた」。
あいさつだけでほぼ9割5分歌詞を作った素晴らしいやつです。
これは言葉の意味もそうだが、しつけ関係の意味も含まれてるんだろうね。プゥちゃんの「ありがとう」のやつ、あれに通じるところもあるんじゃなかろうか。
集中講義でも言ったかもしれんが、終盤の
「ごぶさた 久しぶり お元気ですか
はじめまして よろしく お邪魔します
いらっしゃい ようこそ 失礼しました
どういたしまして おいとまします」
このくだりが秀逸すぎてたまらん。
確かに子供が使うか?って感じにはなってるが、構成やらなにやら考えるともう、負けました。
挨拶はこれ一つでまかなえる、そんな歌。
以上が1巻内容です。
このビデオセットが「ことばとかず」ってタイトルで、1巻は「ことば」に焦点を絞られてます。位置指定は一見算数的な部分もありそうですが、「言葉における位置の指定」「場所を言葉で伝える」という捉え方だろうから国語というくくりになるんでしょうね。
んで、セットの構成が国語3本算数2本って感じの中、全体を眺めるとこの1巻はその中でも感覚に訴えるとこが大きいように思います。
平仮名を覚える、読みの違いを知る、接続詞の効用を感じる、そんな言うなれば国語の各論じゃなくて。
なんと言えばいいのか。
総論って言うほど大層なもんでもないしなあ・・・・・・。
────だから。
ああ。
そうか!
だから、「こんなときなんていうの」なのか!
冒頭のゴリラの件は、「物事を伝えたいときなんていうの」だ。
プゥちゃんについては言わずもがな、位置指定だって「ムックがかいてほしいところをなんて言えばいいのか」だし、あいさつの歌に至っては「こういうときどんなあいさつすればいいの」なんだから、結局「こんなときなんていうの」だ。
うわ、このビデオタイトルって、別に「こんなときなんていうのおじさんがいるからー」とかじゃなくて、本当にそういうものだったのか。
そういうテーマでタイトルつけてんだから当然のことなのに、今ものすごい納得しちゃったよ。馬鹿か私は。
国語の仮名・文法についてではなく、日常、生活してて、普通に話す言葉を感覚で受け取るみたいなそういう話。そういうビデオ。しつけを絡めつつも、1巻なのであまり難しくない内容で言葉に触れ合わせる。それが「こんなときなんていうの」ってテーマで行われていると。
そういうことなのか。
1巻はそんな内容。
考えてるなあ。
こういうね、スポット的なものがいっぱいだったのですよ、ポンキッキは。ねらいを同じとして、表現が違うものとかね、いっぱいあったけど収録されてるのはそん中の一部だね。しりとりとか位置指定も他にもいくつかあったよな?
今後も類似品がでてきそうなそんな予感もしますが、ま、もし出てくるなら手を変え品を変えやってもらっていたということです。
じゃ、なんとなく日本語の楽しさを学べたところで、次回から日本語の作りについて勉強していきましょう。
今回にはない日本語の不思議さ・楽しさ・いやらしさが満載ですよ!
2007年1月28日