小路式・水木しげるロードの歩き方
〜聖地へようこそ〜

 妖怪といえば誰だ?
 水木しげるだ。
 なんたって水木しげるが妖怪を作ったと言っても過言ではないだろう。いや、過言です。すいません。
 ま、どっちにしろ彼なくして現在の隠れた妖怪ブームは成立し得なかったはずだ。だって多分そっち系の婦女子を妖怪世界へ引きずり込んだ京極 夏彦だって、水木しげるさえいなければもう少し違う方向性の人になっていたと思うから。
 思うだけだが。
 さて。
 私も妖怪好きの1人です。妖怪は可愛いです。最近のお気に入りは「がしゃどくろ」です。全然可愛くないが私には可愛く思えるのだ。文句あるか。そんなこんなで深い浅いはおいといて大好きなのですよ。「怪」買ったりフィギュア買い集めたり何を思ったのか「画図百鬼夜行(国書刊行会)」を取り寄せたりする程度には。
 そして一方では水木しげる自体も別に嫌いではない。というか、鬼太郎とか悪魔くんとか好きだ。更に言えば悪魔くんのアニメが好きだったのだが、その辺りはいいではないか。「ゲゲゲの鬼太郎」のコミックやら「貸本・悪魔くん」の復刊本やらを買いましたよ。太田出版万歳。
 そんな人たちの聖地と言えばやはり
境港になるでしょう。水木御大の出身地であり、何故かそれをウリにするというか「水木しげるロード」なるものを作って町おこしを進めているということで、妖怪好きは一生に一度、巡礼の旅のために山陰地方へ行かねばならんのです。勝手に決めました。
 そんなこんなで私は3回くらい行きました。
 微妙に近い位置にあってくれてよかったです。そのうえ親切にも連れてってくれる便利な知人がいてよかったです。
 水木しげるロードの位置は各自ご確認ください。島根と鳥取の県境というかなんというか、松江駅から車で30分弱でいけると思われます。何故こんな抽象的かって、松江にいる知人の車でぶーんって行ったらそのくらいだったから。そんだけです。
 そんなある意味僻地に存在する水木しげるロードには一体何があるのか?
 何故そんなに桜小路のバカは通いつめてるのか?
 通いつめ、他人に勧める程度にステキなモノでも存在するのか?
 そこんとこ考えるとなあ・・・・・
 
────しません。何もありません。
ってなるよなあ(笑)。
 実際、妖怪好きでもなければこんなとこに来てもちっとも面白くないでしょう。だって本当になんの虚飾もなく、単なる田舎町だから。すごい田舎。田舎以外のなんなんだというくらい過疎の激しそうなところ。JRの終点。面白いものを求めてくると裏切られる、地方の町おこしにありがちな場所だ。
 でも妖怪好きにはたまらない。たまらない何かがここにあるのだよ。
 
総数83体(欠損あり)の妖怪ブロンズ像と、ここ以外のどこでも売れそうにない妖怪グッズの店、お食事処が数軒あってあとはただ道。ロードなので道があるだけだ。それだけなんだが行きたくなっちゃうよねー。惜しむらくはグッズのほとんどが鬼太郎関連であることだが仕方ないのでそこんとこは見逃そう。
 とにかくここに辿り着くことが重要だからJRでも車でもなんでも使ってくれ。駐車場は一応あるから車でも多分大丈夫。
 到着したら何よりもまず
「妖怪ガイドブック」というのをそこらの店で買うこと。100円で売ってて結構重宝します。中身はロードの変遷とかブロンズ像の位置とか妖怪の名前説明効能(後述)などが写真入りで記述されているというもの。これは嬉しい。出現地なんかもあって勉強になる。妖怪占いとかついてて遊び心満点だ。
 スタンプラリーができるんだけど、それもこの冊子があってこそなんで必ず買うように。100円なんだからケチるな。関係ないけど、スタンプ全部集めても賞品は出ません。
 表紙こんなです。薄っぺらいけど万能だ。
 その後、目玉とも言える
ブロンズ像を見て回るのか、とにかくグッズを買いあさるのかという選択をしなければならない。私はとりあえず像を舐めるように見て回るのでそっちから攻めたい。
 全長800mあるというこの道は眺めると↓こんな感じ。ちなみに右は駐車場入り口と便所。

 見ての通り、静かな田舎町に突如「MIZUKI ROAD」と書かれた板が立ち、それだけでなんとか観光地としての自己主張をしてる風です。この道にブロンズ像が乱立しているわけだ。正確にはJR境港駅の駅前ロータリー(人寂しい)からアーケードのある商店街直前まで(人がいない)で、往復すれば1.6Kmという長さなんで考えればかなり重労働だ。
 なんか疲れると思ったらそういうことか。私2往復するからなあ・・・3.2Kmは歩いてるな。
 そんなただ道を歩くだけ(四国八十八寺社巡りのように)の場所なので、一応休憩地点というものがある。喫茶店数軒と定食屋みたいなのも確かあった。多分道途中の神戸ベーカリーでも茶が飲めるはずだった。忘れたけど。まあ神戸ベーカリーは特殊なのであと触れます。
 どこから見始めてもいいが、自分が見たい妖怪の位置はチェックしとこう。疲れる前に見ておかないと勿体無いぞ。
 どいつもこいつも素敵で可愛いので写真とかいっぱいとりたいけどそうもいかない。
 マニアックなあなたはマニアックなモノを選ぼう。うわんとか。普通に撮りたい人はしげるロードが勧める記念撮影人気スポットっつーのがあるのでそれを参考にするが良かろう。ま、あれっすよ。
でかい鬼太郎とか、でかいねずみ男とか、のんのんばあとおれとかそーいうのがあるんですよ。普通のブロンズ像が30cmとしたらでかいのは1.5mとかほんとにけっこうでかい(記憶に基づく憶測)。台座があるからかもしんないけど。ねずみ男と握手もできれば鬼太郎の横に座れるし、触りまくって写真撮り放題だ。
 おおそういやなんでか知らんが、豆腐小僧がやたらでかく作ってあるのでアレは必見だ。豆腐小僧って本当は有名で人気者なのか?とありえない空想が働くことうけあいだ。
こういうのがいるんで、写真とりゃいいけど私としてはもっとこう、「なにこれ?」というものの前で撮って欲しい。ポストの上で葉書に乗ってる鬼太郎撮ったって普通だろう。
 だからその「普通でないもの」を探すために先のガイドブックというものが役立つのだ。写真入りだし。
 しかもこのガイドブックは、見て回るとき便利!以上の能力を発揮する。何って少し触れたが「効能」のことだ。なんつーか誰でも思うだろう。妖怪の効能って一体なんだ?────っていうか、妖怪自体が人間様に何かしてくれるというのか?
 妖怪ってそこにただ在るものじゃないか。
 杉の木がざわざわするのが笑い声に聞こえたから「つるべおとし」が生まれたとか、ね?この解釈は私が勝手にやってるもんだが怪異なんてこんなもんだろ。幽霊見たり枯れ尾花なのな。しかしここではそうでもないらしい。
 さて、じゃ、水木しげるロードにおける妖怪の効能をいくつか拝見してみよう。

がしゃどくろ
 のたれ死にした人々の恨みが集まった巨大妖怪。夜、ガチガチという音をさせて歩く。
 効能/義理がたくなる。
ぬっぺっぽう
 廃寺に現われる。夜中に物音がして、廊下を見ると顔らしきものがある肉の塊が歩いている。
 効能/痩せている人も太れる。
ぬらりひょん
 妖怪の総大将ともいわれる。人々が忙しい夕方時、勝手に座敷に上がりこんでお茶を飲んだりする。
 効能/人の気持ちがわかるようになる
やまわろ
 深山に住み、エビガニを捕らえて食べる。この「やまわろ」を傷つけたり殺したりすると、病気になると言われている。
 効能/カニに恵まれる。


 
なんじゃこりゃあああああああ!!
 妖怪の説明と効能があってねえよ。全部が全部じゃないが大体こんな感じ。ぬらりひょんで人の気持ちがわかるようになるのか?義理がたいって話どこででてくるがしゃどくろ。っていうかカニに恵まれるってどんな世界なんだよ!ちくしょう
境港大好きだ!!
 この他にも
網切り/刃物の切れ味がよくなる
ろくろくび/気が長くなる
泥田坊/盆踊りが上手くなる(ブロンズ像の形見れば納得します)
朱の盆/赤面症がなおる
足長手長/スタイルがよくなる
小豆洗い/おめでたい一年になる

こんなんばっか。
 小豆洗いって一体なんなんだろうな?
 ま、こういうことがガイドブックに延々かいてあるんで、参考にしつつ回ってみてくださいよ。多分触ったり写真撮ったりしたら、妖怪それぞれの効能が効いてくるんだろう。すごいね。

(左・手長足長 右・ぬっぺっぽう)
 さてこれらのどこに触るのが一番効果的なのか?頭かね?
 がしゃどくろに関しては何も迷うことはないのだけど。

こんなだから。
 なんというか、ただの骸骨ね。私これが最近本当に大好きで。妖怪舎のフィギュアも買ったけどこれはいいよ。なんつうか味があっていい。単に驚いてるだけのサラリーマンフィギュアも良かったけどね(カバヤかなんかのフィギュアでサラリーマン山田が出なかったんで、妖怪舎で買いましたよ。ええ)。
 いやそれは良くて見てよ写真。
 
がしゃどくろの背中に小銭が!!
 目玉の親父のお椀までならわかるが、何故単なる骨に?これ骨だぞ?しかも効能はまだしも性質はあんまいいモノではないのだが────そうか。みんなそんなに義理堅くなりたいのか。いいことだ。ということで私もいれておきましたが、こういうの日本人らしくてよいと思うですよ。笑えました。
 他にもいろいろあります。
 足首しかない鬼太郎とか。多分壊れてるんだろうけど。
 ロードを半分に分けて考えると、境港駅側の方がブロンズ像は充実してますね。だってさー、がしゃどくろ・ぬっぺっぽう・豆腐小僧・川赤子・鉄鼠なんかは駅側だもん。駅側にやっぱ力入ってしまうじゃないか。なあ。
 んでもう一方は店に重点が置かれてる。かといって店が乱立していてすげえ!!ってことはないんですがね。ブロンズ像の代わりに妖怪レリーフや絵タイルなるものが
こんなふうに
埋め込まれたり置いてあったりしてくるんで、その分像も少なくなるわな。
 いいんだけどね。


 そんなこんなでぐるりとブロンズ像めぐりを終えたなら、今度は土産物巡りに出発せねばなるまい。
 そうなのだ。
 ブロンズに精力費やして回った後土産物へ行くということは、しげるロード2往復という無駄足作業にどうしてもなってしまうのだ。
 かといって店に入りつつやってると荷物が重くて動きづらくなる。
 だから私は個別にやるのだ。
 荷物あったら写真撮るのに邪魔だろう?そうだろう?
 よし。


 土産物屋襲来編につづく。