山陰はいいところだと思うよ。
10月の連休に山陰方面へ行こうという計画をしたのは8月のことだったろうか。
しかし、その計画を実行にうつすにはいくつかのハードルを越えねばならなかった。
一つは、誰か一緒に行く人を募ること。もう一つは、私の代わりに運転してくれる人をとっ捕まえること。
どちらも難儀な話です。
そうして考えた末に出した結論は突拍子もないもので(完全にオレ様なプランだったから)、けれど言うだけなら言ってみようと提案を持ちかけた相手は現在埼玉在住の知り合いだった。
彼女は数年前に数年ほど松江で暮らしており、山陰の地理には私より詳しい。
運転できる。
あとはまあ、それなりにいい人だから。私と会話できる数少ない人間でもあるし。
便利な人なのだな。
今年8月東京へ行った際に会い、提案を持ちかけた。考えてるだけだから、聞くだけ聞いてみてくださいということで────広島へ帰郷する交通費半分持つから、境港へ行こうという提案。
速攻、承諾された。
この人はすごいと思った。
ということで。
その問題の女ともう一人と私の3人で山陰へ小旅行です。
境港へ、境港へ行きたかったんだ私は!
基本的には広島駅で全員が集合したので旅はそこからということになるのだが、なんだかもう、それ以前にもいろいろありました。いろいろありましたがはしょりましょう。
あれですよ。
桜小路に運転させるなという話です。あんな車線の多い交通量の多い気違いじみた道路なんざ普通に走れるか!
車買ってから気付いたことなんですが、私、運転に向いてないんですよ。技術云々の話でなくて、車がいっぱいいる道に出るとそこにいる全員が私を苛んでいる気がして非常に怖くて鬱な気分になるから。病気ですね。いやなんか「このメスブタが!消えろ!」って絶対思われてる気分になってもう最低。すごいいや。
そんなこんなで基本的に人が多いところ走るのはいやです。
だから駅からは運転交替。
非常に快適な感じです。
まず行きしなに寄ろうというのは、「鉄の未来科学館」。
どうでもいい話ですが、私が普通一般的婦女子が訪れるようなところに全くもって興味がないことからかなんなのか、今回訪れるその9割5分は私の嗜好による選択になってます。なんかどこに行きたいか挙げろと言われ(水木しげるロードは別格なのでそれ以外という意)、私が選んでここがいいと言ったところに行くというのが今回のメンバー内では暗黙の了解になってるとかそういう感じがしないでもない。
よく考えなくても嫌な奴だな私は。
まあそんなこんなで、博物館大好きっ子の私がいろいろ検索してて、まあ道なりにあるものだしいいんじゃねえかと提案したところがここってことで。
この「鉄」関係の博物館、どうやらこの村がそれで村おこしを考えているらしく、たたら製鉄に関わるものが村に点在してるっぽいです。昔のそういう製鉄の説明から維新以後の炉が復元してあったりとなかなか興味深いものでした。時間があれば全部回ってみたいなーと思う、そんなとこ。
個人的にはグリーンシャワーの森とかなんかそんな遊歩道めいた名前の場所も気になるといえばそうなのだが。
科学館、外観はこんなような。中には右の写真のように、炉で働く人の等身大模型がついている。好き。
でも生身の人は全然いませんでした。数人の老人が思い出したように現れるくらいで、閑散としていたので穴場だと思う。なんつーか・・・・・・ここ面白いけどなあ?私は好きだが人気ないのかなあ?山の上だし誰も気付いてないのかも知れん。暇な人は行ってみるといいですよ。
で、きっと、客はいないし、若者はそうそうこないからってことなのか、やけに職員のおばちゃんが好意的。こういう田舎の博物館の職員さんはみんないい人なので大好きです。
たまたまオルゴールの特別展をしていたとかで、いろいろと見せてもらったり説明してもらったりしました。
でかいオルゴールってすごいんだねえ。和音とかが半端じゃねえ。あんな素敵な和音のオルゴール曲、初めて聞いた。ちょっと感動した。
左がその感動的オルゴール。2曲も入ってあの技はちょっとすごいぞ。
ちなみに、ここ、記帳して帰れます。
アホっぽく「桜小路」と書いて帰ったです。あまりにも暇なので行ってみようという人は、何かの記念に見てくれると嬉しい。
その後はまっすぐ松江市内に入りまして、八重垣神社へ行ってみた。
あれですよ。占い用紙を池に浮かべて占ったりするような、そういう神社。行ったことないけど、貴船神社とかこういう感じなのかなと思いつつ、折角来たので占いなぞやってみようということになった。
ちなみにここでおみくじ引いたわけですが、おみくじん中にお守り入ってたりするのあるじゃん。
私ゃもう金が欲しくてたまらんので、「金欲しいなー」と思いつつ引いたら金運お守りみたいなのがあたりました。金運向上するぜこんちくしょう、みたいなやつ。びっくりした。欲しいものは手に入るようになってんのかなーと世界の不思議さに驚いたものです。
まあそりゃ良くて。
神社の奥の方への道をとると山門のようなものがあり、小さな池に到達する。
で、社務所で買った占い用紙を池に浮かべ、100円か10円を置いて見守るのです。穴あいてるコインはきっと駄目なんだろうな。
現場にはものすごい数の女たちがわらわらいたので、なんかすごかったです。っていうか、そいつらの半数がしゃがむと背中が確実に見える服装でいらっしゃって、私はこいつらを蹴り落としたくなりましたよ。
背中見せんな。
占いの判断基準は、上記のように紙を浮かべ、15分以内に沈めば良縁が近く、30分以上になると遠いとか、浮かべた後近くで沈めば相手が近く遠ければ遠いみたいなそういうことらしい。
どうでもいいけど、これ浮かべるとき、池に落ちそうですげえ怖い。
結果ですか?
中ー途半端な位置に、12分くらいで沈みましたよ。
中途半端過ぎだ!面白くねえ!12分もかかるなら、45分くらいかかって沈んで、「やっぱ桜小路は人として終わってるよね」くらい笑いをくれよこの野郎!
他二人がなかなか早く沈んで待ってもらうのがすごく忍びなく、そんなことを思ったのでした。
んでまあ、この占い方法に対する仮説ですが。
紙を社務所で買って、それ握って池まで行くわけでしょう?握ってる間に手油がついて沈みにくくなるとかそういうことはないんだろうか。私がなんか他の人待ってたりおみくじ木に結ぶのに握りしめたりして結構くしゃくしゃになりましてねえ・・・・・・────って、言い訳ですね。
言い訳はいけません。
気を取り直して、「小泉八雲記念館」へ向かう。
八雲先生、素敵です。素敵なのはいいけど、空調をもっとどうにかしてください。
ここは特にこれといってフツーでした。すごい好きだけど、どう表現してよいやらよくわからんので、フツーというしかないというか。とりあえず、彼の遺品等への説明書きを実子の「時」という人が手書きしてました。
この人、字が上手い。
こういう字書いてみたいなあ。
達筆なのに読みやすい、いい字体なんですよ。このフォント欲しいなあ。
記念館を出た後、松江城のふもとにある茶屋に、美味い団子があるというので連れて行かれた。恐らくここが、唯一私でない人のたっての希望で訪れた場所だと思う。・・・・・・・・・ああもう一箇所あったけど、それはまあいいや。
松江に住んでいた彼女が、その味噌塗って食べる団子が好きで好きで仕方ないらしい。
しかし埼玉にはそんなもんはなく、どうしても食いたいのだということでそこへ連行された。
味噌かあんこを塗ることができるそれ、私は味噌がいやなのであんこにした。
なんつーか・・・・・・多いよこれ。団子の一個一個がでかいのな。団子というよりそれはもう、平餅を3つ串刺しにしたというのが正しいのではないかというボリューム感。他二人はペロリとたいらげていらっしゃったが、私にはどうもこう、多かったなあ。3つ刺さってたんで、2つなら大丈夫だと思うんだが。
つけてあるのがあんこってのもいけなかったかもな。しかし味噌はイヤだったんだ。
ジレンマですね。
ちょっと気持ち悪くなって大変だったよ。
行く人は量を考えて、つけるのは味噌にした方がいいと思いました。団子自体は美味いので、あとは量の問題です。
その後は宿へ向かいました。
観光地の店は閉まるの早いなあと思いつつ。
その夜はこれといった事件はなかった。
誰かが持ってきた宿への地図の表示が間違ってて、怪しい区画へ到達してやばかったというくらい。
ものすごい客引きでしたよ。やばいって。
あれは地図作ってる某社の責任だが、まあそれはそれだ。
翌日、朝から境港へ。
水木しげるロードへ。
今回の目的はそこへ行くためで、後はおまけなんだから気合いも入るというものです。
もうここに来るのは何回目だろうか・・・・・・6回とかそんな感じかなあ。大体にして水木しげる記念館へ入るのは3回目であることだし、結構なリピーターと言っても過言ではない。
何故そんなに訪れるかと問われても、何がどういいかとかそんなことは表現できん。
妖怪のブロンズ像がそこにあるというだけで興奮するという、私の変態性が大きく作用していることは間違いないが。
なんにせよ最近新しい店も増えたし、あとはマイナー妖怪のグッズをもっと増やしてくれれば言うことはないのだけどな。
ということで到着後、うろうろしてたら境港駅に電車が到着。噂の妖怪列車を初めて見たので写真を撮ってみる。
でもやっぱ鬼太郎中心なので悔しい思いにとらわれた。
時代はべとべとさんだろう!
とりあえず記念館の方向へ歩きながら銅像を観察。何回も見ているはずなのに、新しい微妙な感動があるのは何故なのでしょうか。
このあたりのって、前々からあったもんだから、見るのも6回目ってことになるはずなんだが────今までに感じたことのない可愛さというか、愛着というか、素敵さと言えばいいのか何かよくわからない愛情が私の中から迸る。
もう大変。
なので写真撮ったわけですが、この中のいくつかのその気になる理由はなんとなくわかる。
雷獣は「もっけ」の影響、すねこすりは「MISSING PARTS」、おおかむろは家にあるフィギュアを眺めてたらそのあまりの可愛さに虜になってしまったのではなかろうか。
何度行っても新たな感動のある水木しげるロード。
ものすごく満足しながらぐいぐい歩く。途中、最近できたらしい「水木しげる文庫」に入ったらすごいものを見つけた。
他のなんでもなくこいつらのぬいぐるみが存在することが驚愕だ。
当然買うしかないだろう。サラリーマン山田だと思うんだけど、商品名の表示が「眼鏡出っ歯ぬいぐるみ」となっているところにちょっとした切なさも感じるいいグッズです。
べとべとさんの丸さなんてあんたもう、私を悶え死にさせる気か!と言いたくなるほどの素晴らしさ。
ああもうどうしてくれよう。
カレンダーとともに購入したりして、記念館を訪れ今度は復路を練り歩く。
東海道五十三次フィギュアがすげえ欲しかったんだけど、でかいので家に置くとこないし今回は見送りました。スイッチカバーも卓上ライトも欲しいけど使わないだろうからと冷静になってやめてみたりして。そんな冷静さはいらんだろうか。
ああそれでもそれらのデザインがもっと違う妖怪なら思考する間もなく買ってたのかもなあ。
さて。
この時点でかなりの時間が過ぎていて、今までにないロードへの堪能ぶりに自分で驚くほどだった。
────で。
来たときに気付いてたんですがね。
駅前にこういう新作の銅像があったりして、新しいのがいつの間にか増えてるよなーって。
そういえば随分前に、ロードの銅像増やすのに出資者を募集してる記事があったなっての思い出した。
1口100万とかそんな感じのもので、個人ではいくらなんでも出資は難しいなって金額で私は傍観してました。で、そのままそんな記事のこたあすっかり忘れていたんだが────あれに応募者がちゃんといてちゃんと新しいものを作って設置できたんだなーって理解するともう、ちょっとした感動です。
みんな妖怪好きなのだなあ。
こういうのが増えてました。見づらかったら勘弁してください。
新しいので、台座から銅像本体までがきれいでぴかぴか。つるっつるしててもうなでずにはいられない。
だから古いやつはいろいろとある意味逆にてかてかになってたりするわけだが、だって丸い部分は触らずにはられんだろう!
これら全てに寄贈者がいるわけで、台座にはその名前がきちんと刻印してありました。
いいよなあ。かっこいいよなあ。私にも金があったら一も二もなく出資して、ありえないことに今まで存在しなかったべとべとさんを作ってあげるのに!・・・・・・・・・と思ってたら。
あった。
なにこの丸さ。
超キュートっ。
あまりの感動に撫で回しまくっていた私でした。
そんでも一番感動したのはこれの存在でしょうか。
妖怪じゃないのに(笑)。
そして出資は水木しげる事務所か何かで、粋だなあと思ったわけですわ。
やっぱ彼の漫画といえばサラリーマン山田。銅像化に耐えうるキャラクターですよね。フィギュアにもなってるわけだし、今まで作られていなかったことこそが間違いだったのかもしれません。
そんなこんなで思いのほか長々と居座りました。
楽しかったです。何度きてもここは楽しい。来るたびに新しいグッズがちゃんとあるというのもいい。頑張ってるよな、この観光地。
ついでに駐車代が激安価格なのには感嘆です。びっくりする。
出発後は昼飯食って、おさかなセンターに行きたいという人に合わせてそこへ寄り、そのまま帰宅の途へ。
とうとう私が運転しなければならぬ時がきてしまい、それはもう、緊張の連続。
何故かって、道がわかんねえというのもあるが────ほぼ夕方に差し掛かっていたせいなのか地域的なものなのかよくわからんが、車の多さが並じゃない。私にとってそれは拷問と言って差し支えない感じで、かなりイヤーな気分になったりもしたですよ。
まあ途中で代わったけどね。
ということで、一年半ぶりくらいの水木しげるロードへの旅でした。
記念館で「村おこしに対するアンケート」みたいな感じで、水木しげるロードへのアンケートをやってまして、いろいろあって私が答える羽目になりました。
設問はいろいろあったが、「来るのは何度めか」という問いに対し「6回」とか答える私がすごいのかまだまだなのかよくわからない。「来た理由は?」みたいなものには、
「妖怪が好きだから」
と答えたり、再び来たい理由は何故ですかって問いに、
「妖怪に会いに来ずにはいられないから」
とかいうイタイ回答をしてやったぜ、いっひっひ。
気持ち悪いだろうね、そのアンケート見た人。
まあでも、近くに住んでて一度も行っていないというのなら、一度くらい訪れてもいいだろうそんなところです。
ただの道だけど。
そうだなあ。
また来年とか再来年とかに、埼玉の人を強制召還してまた行きたいなと思います。
一人じゃ行けないから。
昨年は私がずーっと運転していったので、もういやなんです運転要員一人という事態が。
ということで、まああれです。
また水木しげるロード紀行文が書ければいいなということで、今日は終わり。
おわり
2005年10月15日