1.道を聞くな   森村法生

 いやほんま、すんごい道聞かれるんだってば。
 昔から結構道聞かれることは多かった。数えだしたらキリがない。家の近くの中学校へ行こうとしている観光バスの運転手が横断歩道で止まって、「○○中学校はどう行くのか」って聞くしね。タクシーの運ちゃんも「大通りに出る道はどこ」とか言うしね。おまえが今いる道がバスも通る大通りじゃっちゅーねん。
 東京に行けば知らないばあさんが「トイレはどこですか」って聞くし。
 っていうか私もトイレ探してたんですよ?地元じゃないからわかりませんよ?
 まあこんときは就職活動かなんかでスーツ着てたしわかるよ。しかしね、一応いやいやながらついていった卒業旅行、福岡の地で。
 私は上から下まで迷彩柄ですよ?
 駅のホーム、他にもいろいろいるだろう?むしろ私の前方を歩いてる知人たちの方が余程まともな格好をしたいい人そうな感じがしないか?
 なのに何故ばあさんは私に「上り方面はどっちの電車?」と聞くか。
 地元じゃないのでわかりませんよ。マジで。
 大学歩いてれば(この時も迷彩柄)、「大学祭実行委員室はどこ?」とか聞いてくる夫婦のために、わざわざ階段を登って部屋の前まで行ってあげたよ。図書館のわからない老夫婦にも道を教えてあげたよ。
 選挙の日には投票所への道がわからないばあさんのために、曲がり角まで行って指差し確認もしてあげたさ。
 広島駅前で「歩いて平和公園に行きたい」とぬかすバカップルのために、「私もその方向ですから一緒にどう?」という言葉を何度言おうとしたことか。
 っていうか、駅前から平和公園に行くなら、初心者は市電に乗ってください。
 何故私にそんなに道を聞くか。
 そんなにいい人そうか。
 迷彩をこよなく愛すおたく女が皆好きか。
 デブはいい人そうか。
 いい人オーラがにじみでてるか。
 説明下手なんだから私に道を聞くなよ。

 あ、でも、数年前、
 「まあああああ、なんてお洒落!!」
と呼び止めてくれたおばさんは許す。
 全身迷彩だと、おばさんが感激して褒めてくれますよ。
 やってみてください。


 ────と、このように、実践すれば知らない土地でも「いい人そうオーラ」のおかげで声かけられること間違いなしです。
 多分何着てても道聞いてくれる。
 「時刻表の見方がわからん」というおっさんに丁寧に教えてあげたばっかりに連れ去られそうになること請け合い。しかも遅まきながら危険に気付き、「もう行かなきゃならん」と言うと「じゃあ最後に握手してくれ」と言われて握手する羽目になったりもする。
 いやそりゃ私が単なるバカなわけだがな。
 ああ、あと迷彩でかためてると、路上で銀細工な指輪とか売ってる兄ちゃんに声かけられやすい。たまに「かっこいいね、見てって」とか言いつつ腕を強引に掴まれることもあるのでドキドキだ。
 そういうキャッチセールスにあいたい人は参考にしてみてくれ。


 ────ね。
 たまにいい人ぶりたいと願うとき、100の方法を試してみて!
 きっと素敵な休日が過ごせるわ!