ああ、「MONSTER」とかぶったよ・・・。

 昔々、まだ私が少女漫画雑誌なぞを買ってもらってうはうはしていた頃────といったら何年前になるんだ?10年単位で前のことなんだとは思うが・・・もしかしたら小学館系の学習雑誌を買ってもらうだけでも喜んでいた純真なあの頃ですよ。
 あーいう低年齢層向けの雑誌には用途不明の付録がついてるじゃないですか。
 例えば、3月号なら「ひな祭り用の組立雛壇」みたいなのとか。7月号くらいなら暑中見舞いの絵葉書。そしてコンスタントについてくる組み立ててもなんの用途も思い浮かばないちんけな箱とか。
 まあ、所詮は付録なんてそんなものです。今までの記憶で最も役に立つのってトランプとかじゃないか?あと12月号についてるカレンダーとか。
 そんないいのか悪いのかわからん付録群の中で、たまに「別冊漫画」ってついてませんでした?漫画。漫画雑誌のくせに更に漫画をつけるわけですね。で、この付録漫画って、
@ 現在連載中、又は終了した人気の高い漫画の番外編
A 中堅、若しくは三流どころの読みきり

という二種類に分けられてませんでした?なんかこう、新学期特別大別冊、みたいな感覚で新人とかの紹介に一役買うような存在として。
 私はりぼんっ子だったのでりぼんに限定するけども、前者の具体例は「お父さんは心配症」2回ほど正月に50ページの別冊になって、「星の瞳のシルエット」は連載中に「空色のメロディ」や「いるかちゃんヨロシク」は連載後に番外編を書いているはず。後者はまあ、なんつーかいろいろあって覚えてないが、谷川史子とか?楠桂とか?その他新人とかが書いてましたよ。たくさん。
 そんな付録漫画なんだけども、今回主題としたいのはそういう話じゃなくてですね、めちゃめちゃ記憶に残る話があるですよ、という思い出話みたいなもんがしたいのです。そしてタイトルが知りたいのです。
 多分カテゴリとしてはAに属し、中堅というよりもマニアックな作り手が描いていたと思う。はっきりいって、私はこの人の漫画はこれしか知らない(といっても随分昔で記憶が曖昧なので誰が描いたかわかんないからなんとも言えんが)
 それなのに覚えているというのすごくない?すごくないか。
 しかしこれは子供心に奇妙な感慨を抱かせたものです。
 一体何の雑誌だったのか。とにかく「何かの雑誌の付録の別冊漫画」だったことだけ覚えてて、その他のことについては全く知らん。うちの家にあるくらいだからりぼんなんだとは思うが、今思い返す雰囲気から違うかなあ?と思ったりするし、もしかしたら小学館学習雑誌かもしんないけど結局何かわかんないから考えないことにしよう。姉の買ってた雑誌の付録だったのかもしれない。
 まあそれにもAの例に漏れず、短い読み切りが幾つか入っていて問題の漫画はトリを飾っていた。
 おそらく他のは新人さんでそいつは大御所────という位置付けだったんじゃないだろうか?あまりにも前の幾つかとソレとは雰囲気が違っていたし。それにまあ、今でも記憶に残る内容っていうので、三流や新人等の十派一絡げとは一線を画していたのかもしれない。
 とりあえず内容を語ってみる。


 タイトル不明/作者不明/出版社不明/発表年不明
 絵的には固めの少女漫画系(下手ではないがすっげえ洗練されてるわけでもない)
 下記の一部は桜小路の記憶を基にした創作です。


 平和なある日の放課後、佳代子(仮名)はいつも通りに家路についた。
 夕方からは雨になるという予報の通り空はどんよりと曇っている。学生鞄を片手に彼女は少し急ぎ足で歩いている。幾人かの同級生や顔見知りのおばさんたちと和やかな挨拶をかわした。
 彼女は今、いつも通りの平和で穏やかな日常の中にいる。
 これから起こる出来事など知る由もなく。
 そして、たった一人彼女の行く末を知る者が、ちょっと後ろの電信柱の陰から彼女の後姿を見つめていた────。

場面1  喪失
 長倉佳代子(仮名)はごく普通の中学生だ。
 肩より少し長めの髪、風紀検査にひっかかることは絶対にない制服、どこにでもいるちょっと夢見がちでも真面目な女の子で、優しい両親とごく普通の平均的な一戸建てに3人で住んでいる。
 今まさに彼女は目指していた我が家のドアを開けた。
 「ただいまあ」
 明るい声に奥から母親が現われる。エプロンをかけた古典的な専業主婦の姿だ。
 「ただいまお母さん。お腹減っちゃった」
 靴を脱ぎながら佳代子はそう話しかけたがいつものような返事が返ってこない。脱ぎかけた靴をそのままに母親を仰ぎ見た。そこに見た表情は────当惑?それとも恐怖?
 「どうしたの?お母さん」
 平静を装い尋ねる佳代子に母親は逆に尋ねた。
 「────あの・・・どなたですか?」
 え?
 当惑する母親より更に困惑した顔で少女はつぶやく。
 「何冗談言ってるの?どうしたのお母さん」
 「どなたか知りませんが警察を呼びますよ。早く出て行ってください」
 「なんで?私、佳代子よ?どうしてそんなこというの?!」
 詰めよる佳代子を見て母親が何か叫ぼうとしたとき、ドアが開いて見知らぬ少女が現われる。黒髪で性格のキツそうな同じ年代くらいの子だ。
 謎の少女は当然の如く問題発言をしてくれる。
 「お母さんただいまぁ。────あれ?その人だれ?」
 「ああ・・・佳代子。あなたの友達じゃないのね?いきなり家に上がりこんできて佳代子だって言い張るからお母さんどうしようかと思って」
 「・・・何、言ってるの?私が佳代子よ?お母さんなんでそんなこと・・・」
 「あんたこそ何言ってんのよ。私が佳代子なのよ?わけわかんない人だなあ。出てってよ」
 黒佳代子はそう言い放ち、忘我する彼女の背を押す。抵抗する間もなく外へ追い出された佳代子は、何が起こっているのか理解もできずとりあえず住宅街の道を歩き出した。
 すれ違う親子連れ。すれ違う会社帰りの人。────私が佳代子なのに・・・一体何がどうなっているというの?悪い夢でも見ているのかしら?
 苦悩する佳代子、唐突に思いつく。
 友達のところへ行って、そして私を佳代子と証明してもらおう。そうすればわかってもらえる。
 先ほど帰宅途中に挨拶を交わした利恵(仮名)に会いに行こう!
 いつも遊びに行き通い慣れてしまった道を大急ぎで走った。けっこう近所に住んでいる利恵の家につき、息つく間ももどかしく呼び鈴を鳴らした。見慣れた少女が外に出てくる。利恵。あなたなら私を佳代子だと証明してくれるはず。
 「ねえ、利恵」
 そう言いかけたとき、友達の表情がいつものものではないことに気付いた。
 「・・・どなたですか?」
 こいつもか!
 「な、何言ってるの!私は長倉佳代子よ。さっき挨拶してくれたじゃない!」
 自分のことを主張すればするほど、それが自分を空回りさせていくことを感じた。利恵は険しい顔で突き放す。
 「私は確かに佳代子とは友達だけどあなたなんて知らないわ。冗談に付き合ってる暇はないの」
 ばたん。
 ドアは閉じられた。
 そして降り出す雨。
 茫然としたまま降って湧いた出来事に、彼女は放心するしかなかった。 

 で。
 このあと、彼女は自分が佳代子であることを証明してくれる人を求めて彷徨うわけだ。雨というか豪雨というか、そんな中を歩き回り知らないおっさんにも話し掛けたりしたような気がする。
 出る結論は「おまえなんか知らない」。
 街ぐるみで罠に嵌められたような状況か。
 佳代子は絶望し疲れ果て、道の真ん中で気を失う。
 そこへずっと彼女の行動を物陰から観察していた少年(青年か?)が出てき、悔しそうな顔をしながら抱えて連れて行った。

場面2  告白
 気付くと佳代子はぼろそうなアパートの一室にいた。
 辺りを見回し自分の体を見下ろす。見知らぬ部屋、男物のパジャマを着ている自分。外は未だ雨が降っており、先ほどまでの混乱を思い出して絶望した。
 ────ああ、夢ではなかったんだ。
 そこへ更に彼女を混乱に陥れるかのように男がドアを開けて現われる。
 自分より3、4歳上くらいでちょっとかっこいい男。起きている佳代子に気付き、彼はぎこちなく笑みを浮かべた。あからさまに怪しいヤツだ。
 「あなた、誰ですか」
 「怪しい者じゃない。倒れていた君を連れてきただけ。着替えはさせてもらったけど何もしてない」
 彼は言い訳するように喋り佳代子の横に座った。
 「君の名前は?」
 「────わからない。私は長倉佳代子のはずなのに、みんな知らないって言うから」
 「ちくしょう!!」
 佳代子の独白に少年はいきなり激昂した。訳がわからない。
 「やっぱりあいつはそういうヤツなんだ。いらなくなったらすぐに捨てて、次に新しいものを手に入れるんだ。佳代子、オレがおまえを助けてやる。安心しろ」
 「・・・どういうことですか?」
 「行くところがないんだろう?オレと一緒に暮らせばいい。おまえは多分、捨てられたんだ」
 「そんなこと」
 ない、とは言い切れず彼女は口を噤んだ。現に今、佳代子は自分が佳代子である自信はなく、誰も彼女を知らないという悪夢の状況に追い込まれている。れけど今、目の前のなんだかかっこいい少年は佳代子を佳代子だと認めてくれた。そんな些細なことで名前も何も知らないこの男を半ば信用できる気がする。
 「とりあえず佳代子はもう少し休んだ方がいい。オレは用事があるから出てくるよ」
 「あの、名前はなんていうんですか」
 「オレは────浩一(仮名)。君の母親に捨てられた、君の、兄だ」
 驚く佳代子。だって、自分に兄がいたなんて今まで知らなかった。ずっと姉とか兄とかがいればいいなって思っていたけど、本当に目の前にいるのが兄さんだなんてすぐに信じられるわけがない。でも彼の言うことが間違っているとは思えなかった。
 「兄さんがいたなんて知らなかった」
 「ちくしょう・・・佳代子に何も教えてないとはな。オレなんてどうでもいい存在ってわけか」
 大人しくしとけよと言い置いて浩一は出て行った。
 依然、雨は降り続いている────。

 そんなこんなで、佳代子と浩一は再会みたいなものを果たした。
 って言ったって、今回の主眼であるところの「佳代子が佳代子を喪失した」件については何の解決もしちゃいない。っていうかほったらかしだ。
 浩一は開始当初から何を企んでいたのか?どうして母親は佳代子を忘れたのか?
 ぶっちゃけここで全部明かしますと────
 次の場面は佳代子の家の中になるんですね。んで、部屋の中には母親と黒佳代子、そして背広を着た刑事数名と鑑識っぽい男たちがいる。机の上になにやら機械とかのせて。そして母親は怒っている。
 「佳代子を見失ったってどういうことですか!」
 母親は刑事に詰め寄る。
 「だから私、最初から反対したのよね」
 黒佳代子はキツい性格を如実に表した表情でそうぼやく。
 「早苗(仮名)!おまえは少し黙っていなさい。・・・お母さん、見失ったといってもまだこの町から出て行ってはいません。それに脅迫状を送ってきているということは、まだこちらに接触してくる可能性があるということです」
 「そうやって佳代子が死んでしまったらどうしてくれるんですか!!あなたたちの言うことに従うんじゃなかったっ・・・!佳代子・・・可哀想な佳代子・・・・・・」
 泣き崩れる母親。早苗と呼ばれた黒佳代子は少し外を眺める。
 降り続く雨。そして、机の上の封筒。
 ────そうなんですね。実は長倉家に脅迫状が届いていたんですよ。恐らく、「長倉佳代子を誘拐する」みたいな文面の。もちろん母親は警察に連絡、事件になっていないにも関わらず動き出した警察は、ある一つの提案をしてきたのだ。
 脅迫してきただけでまだ佳代子本人は誘拐されていない。もし、彼女が自分を佳代子だとわからなくすれば、犯人の方も摩り替わっている早苗(黒佳代子)を佳代子だと思い本物の方の危機は免れるのではないか?ちなみに早苗はこの場の一番偉い刑事の娘ですが。
 だから結局みんなで芝居をうってでた。とりあえず母親が。一番親しい友人に根回しして演技してもらい佳代子を孤立させる。そうして保護しておいて、早苗に近づいてきた犯人を返り討ちにしよう────という計画だったのだが、佳代子はおそらく誘拐されちゃうし計画台無し。
 絶望する母親と困惑する刑事と言わんことはないと思う早苗。
 そこへ電話がかかってくる。もちろん犯人からの電話だ。それでも犯人相手には芝居を続行しようということで、佳代子を攫ったぞと告げる声に母親は「佳代子はここにいます。イタズラはやめてください」と言い放った。
 その間に逆探知に成功、刑事たちは現場に殺到することにする。

場面3  大団円
 「ちくしょう!!」
 受話器を置いて浩一は吼えた。
 なんなんだあいつは!!佳代子は横にいる?いらない子供を捨てて、もう新しい子供を手に入れたってのか。上等じゃないか。────佳代子を連れてこの町を出てやる。
 オレたちは捨てられたんだから。
 電話ボックスから出て急ぎ足で帰路に着く。雨は激しく風景はぼやけてうつった。
 アパート下につきさびたぼろい階段に足をかけたとき、道の向こうから警官の姿が見えた。やばいと思い方向を変えるが逆の道からも警官がおしよせてくる。
 浩一はものの見事に追い詰められてしまった。

 ところで佳代子はその光景を部屋から見ていた。
 見ていたというか、することもなく外を見ていたら警官に取り囲まれる大事な兄の姿を発見したというか。
 取り押さえられる光景に驚き彼女はパジャマ姿のまま外に飛び出した。
 激しい雨が降る中、傘もささずに彼女は飛び出し逮捕されかかる兄をかばうように割って入った。
 「この人は私のお兄ちゃんよ!なんで捕まえようするの?!」」
 「佳代子・・・いいんだよ」
 「だって、だってお兄ちゃんは私を助けてくれただけよ。何も悪いことしてないのに」
 すると、唐突に警官の群れを押しのけ母親が現われる。やたらに急展開だ。
 「まさか浩一?浩一なの?」
 「────さあな。佳代子もういけよ。オレはおまえを誘拐して金を獲ろうとした犯罪者なんだ」
 「違う。お兄ちゃんはそんな人じゃない」
 佳代子の言葉を無視し、感動というか動揺というかしている母親をにらみつけ罵倒するが、返ってきたのは思いも拠らない(裏を返せばありきたりな)真相の告白だった。
 彼は母親に捨てられたのではなく、前夫と離婚するときに生き別れにさせられてしまったのだと。行方を探していたのだが結局わからず今に至り、ずっと気にかけて忘れてたことはなかったと。
 なんなんだよそれは。オレの今までの恨みと憤りに満ちた半生はなんだったんだよ。
 親子は和解した途端、雨は上がり日が差してくる。
 彼らの前途には明るい未来が用意されているようだった。 


 数日後、登校途中には佳代子と浩一が並んで歩く姿があった。
 浩一の犯罪は結局狂言として処理され重い罰を受けることはなかった。行くところもないということで、長倉家に彼は引き取られることになったのだ。替え玉になっていた早苗は佳代子にわび、かっこいいお兄さんね、などと平和な感想を付け足してくれた。
 うしろから利恵がやってくる。
 「おはよう佳代子!────わあ、かっこいいお兄さんっ。アタックしちゃおうかな」
 「駄目よ。お兄ちゃんは私のなんだから」
 「なによ、ケチっ」
 「あーら、あの時『佳代子なんて知らないわ』とか言っちゃってすごい演技を見せてくれたのは誰だったかしら?」
 「あーそれは言わない約束でしょー?!」
 明るく笑いながら先へ走っていく佳代子。呆れ半分幸せ半分でその後ろ姿を見守る浩一。
 もう、彼らが迷うことはないだろう────。


 そんなこんながこの話の全貌です。
 どうですか?意味わかってもらえましたか?
 これを読んだ当初、私が何を思ったかって言えば、「何故こんな回りくどい方法をとらなけれぱならないんだろうか?それにいくら替え玉が現われたとしても自分は自分、佳代子は佳代子なんだからこんな絶望することなんてないんじゃないか?」みたいなことですね。どうしてこんなことで「私は一体誰なの?!」みたいな話になってしまうのか。変な話だのう・・・と思うことしきり。
 というよりやっぱこの警察の方々が変ということが先ですが。
 この話が気に入ったのかなんなのか幾度が読み返しましたね。だからこそ覚えてるんだけど、毎回思うのはやはり「この計画を考えた警察は阿呆だ」ですよ。町ぐるみ(厳密には友達ぐるみか)でそれに荷担するのもする方だが。犯人は下調べだってしてるだろうから、替え玉作ったって駄目かもとかいう可能性を考えたりはしなかったんだろうか。
 しなかったんだろうな。
 で、たまにこれを思い出してはいた私ですが、最近完結した「MONSTER」って漫画あるじゃないですか。浦沢直樹の、ベストセラーなやつ。
 MONSTERから知ったことって、とりあえず「名前は大切だよね」なんすよ、私。
 生が平等でも死が平等でもどっちでもいい。人間の根幹を破壊するとかもまあおいといて、「私は私」という確固たるものが周囲の人間を排除するだけで揺らいでいく様が描かれてることで、実際こういう立場になったら自分がなんなのだかわかんなくなるんだろうなあと読んでましたよ。ああなんか文章が支離滅裂。
 実際物語りの中核となる双子には名前がなかった。だから「僕は誰?」「私は何?」という衝動で動いてきていたんだよね?違うのか?
 名前がなかったとしたら、今の名前が自分のものではなかったとしたら、そりゃ不安にもなろうしんじゃ結局私は誰よ?ということになるのが筋だ。筋なのだから────上記の話の佳代子が不安になって雨の中絶望してくのも当然の結末。
 そうかそうか、と今更ながら納得しふと考える。
 佳代子の話は全体的に見れば「心温まるヒューマニズムドラマ」なのだが部分的には怖くない?
 そりゃ今回は丸く収まったんでいいよ。
 しかし収まらなかったらどうすんの?佳代子は絶望したまま犯人の手にかかって死ぬとか、なんとか計画は成功したとしても近しい者から「おまえなんぞ知らん」と言われたことは演技だったとわかっていてもトラウマにはなったりしないのか?無茶な提案を受け入れる母親もそうなりゃ後悔し続け生活に支障をきたすようになるかもしらんし────いやほんと誘拐犯が世の中を拗ねた実の兄で良かったよね。実の兄だからこそこれは子供が読むいい話として機能するが、もし違えばどろどろな犯罪漫画だよ実際。
 しかも二人が一緒に暮らせるようになって幸せで平和な中話は終わっていくけども、この先の二人に待ち受けているものは一体なんだと思います?
 存在すら知らなかった兄が出てきたと思ったら皆が「かっこいい」という容貌で、思い込みさえなければ普通の優しいお兄さんですよ。佳代子ちゃん、絶対惚れるって。
 まあそんな先のことはどうでもいいが、この読後にいろんな意味で妙な感慨を残してくれる漫画、誰か知ってる人いませんか?タイトルとか作者とか知りませんか?
 できることならこれをもう一回見てみたいですね。


 つーわけで、MONSTERと比べるのがどうかしてるのかもしれんが、「名前の喪失」というただ一点のみで先を行ってたこの変な誘拐漫画を熱烈に推してみようと思います。
 他にももう一度見たいのはあるんだけどね・・・最終回らへんで主役の女がピンチに陥り、友達以上恋人未満というありがちな位置にいる軟派な男の子がたまたまそのとき家にきてくれるんだけど、明らかに助けを求めることはできない状況で暗号を送るんですよ。
 「私のことはほっといてよ!あんたは、たえこちゃんとかすみれちゃんとかけいこちゃんとかてつこちゃんたちとデートしてればいいでしょう?!」
 男の子はその言い草に怒って帰るんだけど、公園まできてふと思う。
 オレにはそんな名前のガールフレンドはいない。
 地面に名前を書いていくと、
たえこ
すみれ
けいこ
てつこ

 ────上の文字だけ拾うと、「たすけて」になる。
 で、女の子は無事助けてもらえたんだけど、私はもう最初の「たえこちゃん」という名前がツボになったのかこの場面を今でも忘れられません。おそらく「小学5年生」とかあたりの雑誌に載ってたと思うんだけど、タイトル知ってる人いませんか?
 すごいよね、この漫画も。
 ま、それより「佳代子誘拐」の方が気になるという話。

 ああ、どっかにないかなあ。

訂正※姉に聞いてみたら、どうも佳代子は父子家庭だったみたいなんですね。だから、最初に佳代子を不安に陥れる母親みたいなのはどうやらその家の家政婦みたいなんですよ。んで、私の創作内における母親の役回りは父親がやってて、一件落着して平和な数日後、朝新聞を読みながら
 「雨降って地固まる、か」
ともらすんですね。
 劇中の雨はこーいうところにもかけられていたのだ。
 素敵なことだ。

おわり

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