かなり時期のずれた映画評論2
桐山くんというより、沙世子のやってた役の子がかっこ良かったよね。という話。
この話は一応「七日間戦争」評論の本編にあたるものです。
しかももの凄く時期ずれまくりで、見てすぐ書かなかったからまたもやうろ覚えになってます。
その辺りご了承してはいただけないものでしょうか?
何年か前、巷で騒然となった映画があった。
騒然となったがためにヒットしたと言っても過言ではないだろう。
多分騒がなければそんなに凄い映画じゃなかったと思う。PTAは自分たちで自分たちの気に入らない映画を全国に宣伝してしまったのだ。
いわゆる、「バトルロワイアル」騒動である。
────ちょっと歴史の教科書っぽく話してみましたが(いや違うか)、これを見た人たくさんいるんでしょう。話題になったしね。衝撃的(?)な映像だしね。
映画の原作となる「バトルロワイヤル」、もともとは角川系の賞に応募したら最終選考で落とされて太田出版に拾われたという経緯があるのはご存知の通りだ。さすが太田出版だよ。一味違うね。
ここまでなら、単なる小説好きの間で「すごいよね」で終わってたんだけど、それを映画化するということになり広く一般大衆に知られることになった。知られることは嬉しくもあり、少し寂しくもあることですよ。ファン心理というヤツっすかね?
私はこれが出版された頃、姉から紹介の小さな記事を見つけて勧められ、まんまと罠にはまって買ってしまったという出会い方をしてました。いやもう、「殺し合い」というところで楽しそうだよね。読む分には。
面白かったですよ。ええもう。
ちょっとだけ、ちょっとだけと思いながら最後まで読んでしまうという久々の体験もしました。ということはやっぱ面白いんだろうなこれ、という話になるわけで。
私が惚れたのは川田くんね。ありがちです。頑張って欲しかったのは三村くんですか。
主役の二人(七原秋也と中川典子)はどうでもいいよ。それよりも川田くんの邪魔すんじゃねえよと思ってました。
全然知らない人のために内容に言及しますと────
西暦1997年東洋の全体主義国家・大東亜共和国での話。
この国では毎年、全国の中学3年生を対象に任意50クラスを選んで国防上必要な戦闘シミュレーションと称する殺人ゲーム・「プログラム」を行っている。ゲームはクラス毎に行われ、生徒たちは与えられた武器で互いに殺し合い最後に生き残った一人だけが家に帰ることができる。
香川県城岩町立城岩中学校3年B組の七原秋也ら生徒42人は、修学旅行の帰りにバスごと拉致られ高松市沖の小さな島に連行された。催眠ガスによる眠りから覚めた秋也たちに、坂持金発と名乗る政府役人が「プログラム」の開始を告げる。
ゲームに放り込まれた彼らは様々な行動を選択していく。
ギリギリの状況における少年、少女たちの絶望的な青春を描いた問答無用、凶悪無比のデッド&ポップなデス・ゲーム小説!(以上、単行本裏表紙から半ば引用)
要するに殺し合いする生徒たちがどうやって死んでいくかを追ってるんじゃないっすかね?
これは私の解釈なんで作者の意図なんか知らんが、人がそんなわけわからん状況に追い込まれたときどう反応して選択して結局どういう理由で人を殺すのか、それをシミュレーションしてみたって感じ?
にしては主役の秋也の呆れるまでの偽善者ぶりが鼻につくけどね。
読もうと思ったのは内容と出版までの経緯が面白かったからで、こりゃあいいと思ったのは章というか内容の区切りで「残り31人」とかかいてくれるとこっすか?遊び心盛り沢山なわけだが、それが良識ある大人たち(と勝手に思い込んでいる大人たち)に嫌われる一因ではあったと思う。
大体これだけ本が氾濫している時世に、このくらいの芸がなければ売れないでしょう。
連れてこられてゲーム内容を告げる、というゲームも始まってない状況で2人は死んだよね。
積極的に参加したのは二人でこいつらが大多数をぶち殺し回ってくれました。桐山和雄と相馬光子です。
灯台に隠れていた女の子グループ6人くらいの死に様は一種笑えました。いつ誰が裏切っても可笑しくない、という中でお互いをなんとか信頼しあって共同生活を送る彼女らは、秋也を助けてしまうということで亀裂が入ってくる。
弱気な女の子が持ってた毒(これが彼女に与えられた武器だった)で秋也を殺そうとして間違って仲間の女の子が死んでしまい、それが引き金となって取り繕っていた信頼はなくなり相互不信に向かって真っ逆様、全員相撃ちで死んでしまう。
そりゃ都合よすぎるよ、とは思うけどありえない心の動きではないのだから、アリかも?という許容範囲。
結局話の筋として、川田くん(前回の優勝者)に守られた主役たちが生き残り政府から逃げるというよりも戦おうか?という感じで話は終わる。
長く語れば長くなるし短く語れば「殺し合いの話」で語れる内容だ。
どっちにしろ面白かったし、読後感は「80年代を彷彿とさせる青春小説」だった。
すごいでしょ?教育上良くないからって騒がれる小説の後味が「爽やか」なんだよ。トニー&クライブ?だっけ?みたいな。自分で何を言っているのだかわからんが。
読んだ当時はいろんな人に勧めまくってました。残酷そうで怖いから嫌だ、という人にも「でも読めば爽やかな話だよ」ととんでもないこと言ってた気もする。文体としては落ち着いた舞城王太郎で(私の感覚は普通ではないらしいので鵜呑みにされると困るけど)、読みやすいのは読みやすかった。
で、666ページ(正確には667か)に及ぶ話が映画化されるという。
最初の印象は「できるのか?」でした。
原作から入ってしまい、映像化は嬉しいけれども怖くもある。たった2時間かそこらでアレを映像にするのは無理だし、要するに「七日間戦争」みたいなものを見るのは絶対に嫌だ。
だから映画館には行かなかった。
悩んで結局やめた。話題だったし面白いらしいし七日間戦争の頃とは時代が違うけどね。
もともと映画館に行くことのない人間が、そんな賭けのような行動に出ることなんて絶対できない。できないから行かなかったよ。ビデオ借りようか、ぐらいで。地上波放送は無理そうじゃん。
そんでもって、ビデオ借りたのも「一週間レンタル300円」とか、そんな感じになってから思い出したように借りました。新譜の時は全部貸し出し中とかになっててびびったものです。話題だよな(笑)、タイタニックのときもえらい騒ぎだったが。タイタニックのどこがいいのかね、ほんと。
期待しないように期待しないように頑張って鑑賞しました。
面白いらしいという前評判をなんとかねじ伏せ、平静を保ちつつ。
とりあえず思ったのは「展開早っ」ってこと。
私がつぶやくたび姉が「2時間しかないから」と言ってました。確かにね。クラス全員の死に様入って(だからこそ展開超スピード)るんだから、その他の彼らの感情の機微を半ば無視した構成も仕方ないというものか。
そう。
結論はですね、北野武がやってた役以外はOKです。・・・・・・偉そうだな、私。
なんだよ結局こいついい奴なんじゃん、みたいな。坂持金発の役所として、もっとつき抜けた悪役であってほしかった。現代の若者に向けてのメッセージがこめられているとしても、ありゃちょっと私としては拍子抜けかなあ。話をまとめるということに関してはうまく機能したのかもと思うが。
「七日間戦争」では全てを裏切られた。
恐らくあの当時自覚はなくとも作品の根底から勝手に感じ取った私の中で大事なものが、映画は全て無視されただのお祭り騒ぎに成り下げられてしまった。私があの小説から受け取ったものが、映画からは全く受け取ることが出来なかった。だからこそ、「七日間戦争」はクソだと思った。
作ったヤツが小説をそうとしか受け取れなかったんだったら、そりゃ監督と私の間の齟齬であって仕方のない話になるんだけどね。
しかし今回の「バトルロワイアル」、そんなことなかったんですよ。
入れてほしかったのに削られた場面は多々ありましたよ。その台詞あってこそのこの場面なのに、肝心の言葉がなくてちょっと寂しいときもありましたよ。特に三村くんの死に様場面、もっと桐山くんの怖さを露出してほしかったなー、と思わんでもないです。無茶言いますが。
それらは「原作まんまは無理に決まってるし(っていうか、まんま作るということは監督に個性がないということで駄目じゃん)、限られた時間で削られる部分がでてくるのは致し方ないこと」で諦めがつく。
諦めたうえで全体を見れば合格だったんだよ!
なんだか私的に爽やかだったんだ!
ラストシーン、二人が走り去っていく姿。これから頑張れよって思うじゃないか。
そう思わせるだけの力がこの映画にあったとしたら成功じゃん。
これは続いている、まぎれもなく続いている。
────オーケイ、今度は乗ってやるぜ。
こっちが勝つまで、続けてやる。(666ページ)
ここ読んで「よし、頑張れよ」と思った同じ気持ちをきちんと持てたなら、映画はやはり良かったんだ。
で。
多分その「成功」に多大な貢献をした事柄があると思う。その一つだけどさ、昔と違って子役の方々がすっげー演技上手いってこと、ないかな?
これの一番印象深いところって実は、ラストシーンではなく灯台で女の子たちが殺し合う場面でもなく三村くんが犬死にしたところじゃなく、役名・千草貴子が死ぬとこなんだよな。
本読んで随分たってたから、全ての人間の死に方なんて覚えてない。
桐山っていつ死ぬんだ!とこの私が恐怖したこと、相馬も怖いよと思ったこと、川田くん大好きって話、そーいうとこは覚えていた。映画見てからは違います。
千草貴子はすごいです。
新井田和志に襲われかけ口論と激闘の末逆にぶち殺しその後相馬に撃ち殺される、という激動の最期を迎えた彼女の役をやってたのは、NHK「六番目の小夜子」で沙代子役をやってた女の子でした。ちなみにどーいう名前なんだか知らんです。偽小夜子になりすました少女は、金田一少年に出てたよね。
「小夜子」のドラマって何がすごいって主役クラスの人たちみんな演技うまいことだった。
その沙代子がさあ、走って怒鳴って殺して死ぬんだよ。感激しました。私。
死に際に現われる幼馴染みの杉村弘樹との会話も泣かせる、というか本当に上手いよこの人。
ちなみに杉村弘樹は「探知機」持って、好きな女の子を探し回り探し当てたときその女の子に殺されちゃったりします。この死に方もかなり印象深かったよ。可哀想な人だ。
女の子としては誰に殺されるかわかんなくてびくびくしてるんだから、近寄ってくるいかつい男を間違って撃ってしまっても仕方ないと言えば仕方ない。弘樹に「好きだったんだ」とか言われてもの凄いショックを受けた彼女の演技もけっこう良かったですよ。
いや杉村たちのことは置いといて、とりあえず千草貴子が良かったっていう話です。かっこいいんです。それだけで見る価値はあったと断言してもいいでしょう。
当初はね、やはり「桐山くん超怖いよ」というのに目を奪われてました。
三村くんたちをもうちょっと詳しくやってよ、とも思ってました。
しかし観てから大分たって思い返して、そーいうのより千草貴子なんだよな。こんなことになってまで、早朝ランニングとかしてて、アイスピックかなんかで応戦して勝っちゃうというキップの良さがね、かっこよかった。
極端な話主役たちの場面なんか覚えてねえよ(笑)。
だからやっぱり「沙代子」はすごいな。
それが多分一番の私の感想なのです。
結局これって教育上悪いだろうか?
悪いとは思えないんですが。
血がでるから、殺し合うから、で全然子供に見せなかったら結局子供は何が悪いことなんだかわかんないんじゃねーの?どこまでしたら人が死ぬか結局わかんないんじゃねーの?
進んで見せろとは言わんが見せないようにするというのもおかしい話だ。
こーいうの見てマネしてしまう、という短絡的思考をするのならそれはそう教育した親の責任だよ。作品は「人を殺したら面白いよ」なんてメッセージを送ることはないと思うし、逆に「人殺しはやばいよ」というのを伝えたいんじゃないのか?変な話、戦争映画は「戦争しよう」って言ってるわけじゃないじゃん。
何もかもを見せないようにするのっておかしいよなあ。
この映画って18禁とか15禁とかにするようなもんかなあ。
PTAの考えることはおかしいよね。
とりあえず
「Now,again,"2 student remaining".
But of course they're with you all.」(667ページ)
とゆー言葉、私の中の解釈が正しいなら結構ぐっとくるのだが。
まあ連呼する通り私はなんだかズレてるらしいからね、うん。
ということで、バトルロワイアルは成功だったよね?という時期外れのお話でした。
映画しか見たことない人は本を読むべきだと思います。映画じゃわからない心の機微がないと、やっぱ「青春小説」とは思えないかもしんないし。