かなり時期のずれた映画評論
桐山くん超こわーい☆への大いなる序章


 私は映画をほとんど見ない。
 理由はないけど。興味が湧かないからだろうと思う。そんなもんか、普通。
 なんつーか、色々話題になる映画ってあるけど、どれも別に大して面白くなさそうなんだもん。最近で言えばなんですかね?「A.I」?これはもう古いのか。
 殊更このように、映画の分野に関しての知識は皆無に等しいのですよ。
 そんな私がはまった映画と言えば、「アポロ13」「ポセイドンアドベンチャー」そして「ゾンビコップ」(笑)。いやマジで「ゾンビコップ」は面白いよ。絶対円満解決してないのに無理矢理明るく締めるゾンビの主役が超良かったです。
 あと「ヒドゥン」の悪者宇宙人のガキのような行動がイイネ。
 ところで、よるある話なんだけどさ、「原作付きの映画で原作に勝てるものってない」というセオリーってあるじゃん?あの話は良かったけど、映画にしたらちょっと駄目だよね、という。
 映画→原作という順番で見れば特に感じないことも、原作→映画と見るとその落差に愕然とすることは多いと思う。ドラゴンボールのアニメがやたらスローテンポなのにはびっくり、みたいな感じね。違うか。
 全く違う話でも完成度が高ければ受け入れることもできるが(むしろ歓迎する)、そうじゃないとちょっと見苦しくてやだよね。
 それが顕著に表れたのが「ぼくらの七日間戦争」(以下、七日間戦争)だったわけさ。
 知らないかな?宮沢理恵とか菊地英治とかが出てたやつ。そしてTM NETWORKが主題歌を歌って私が頭の先までファンになったわけですが。
 ────いつの話をしてるかだって?
 いつだろ・・・?文庫の奥付から鑑みるに15年くらい前なのだとは思うけども。
 私ね、七日間戦争が超好きだったですよ。
 と言って、何人の人がこれを読んでるのかなあ。本屋にいたとき、中学生くらいの奴らがやたら「ぼくらのシリーズ」を買ってたからかなりの人気だったと思うんでほとんどの人が知っているということで話を進めるぞ。
 粗筋としては、管理教育に不満をもつ中学生が夏休みの初日から七日間、解放区と称して廃工場にたてこもり、大人たちに叛乱を企ててみましたよ、というただそんだけのこと。子供のイタズラが、やたら規模のでかいものになったという表現だろうか。
でもま、これ、三回くらいは読み返してるね。本当に好きだった。この本のせいで全共闘に興味抱いた。抱いたからって勉強をしたわけじゃないけど。大体「全共闘」というものが本を読んでる頃の私にはわかんなかった。なんか大学生が何かに反対してて最後の戦いが安田講堂で行われて大変だったとか、本からの知識しかなかったわけで、気になったのは多分その時学生運動に参加した人たちの情熱と安田講堂の壁に書き残されたといわれる落書き。
 「我々は玉砕の道を選んだのではない。
 我々のあとに必ず我々以上の勇気ある若者が、解放区において、全日本全世界で怒涛進撃を開始するであろうことを固く信じているからこそ、この道を選んだのだ」

 ────なんかさ、かっこよくない?
 この頃の私の好きな言葉は「玉砕」でした。響きがいいから。
 今は「虚無」です。なんにもないって、楽そうだよね。
 みんなで一緒になって何かやってるって楽しいもんなんだよ。一緒に一つのことをやってるってことはさ、みんな親しいってことでしょ。親しくなくても同じ趣味というか、同じ目的の仲間であるわけね。仲間で一緒に一種のお祭り騒ぎをやってのけたんだよ、60年代に学生として生きた大人たちは。
 やろうとは思わないけど、情熱を燃やして戦ってるのは羨ましいと思う。仲間は必要だよね、うん。
 七日間戦争は、そうやって生きてきて、今はただのおっさんおばさんになってしまった大人が育てた子供たちが主役だ。親の中に安保闘争に参加した人が何人かいた。
 この本の出た頃って管理社会だとか騒がれ始めた時代で、中学校の校則やら生活指導の体育教師みたいなのが理不尽なほど悪役に描かれている。そんな悪者たちを中学一年生が叩きのめすという爽快感、夏休みの七日間を廃工場で過ごすという冒険、誘拐されたクラスメートの救出と汚職事件ラジオ生放送というハイテク(というほどのものでもないが)を使った犯罪の暴露、その全てが子供の心に憧れだとか羨望だとかを与えてベストセラーになったんじゃないかと思いませんか?今更ながらに分析してみましたが。
 細かいことは忘れたけど、とりあえず廃工場にたてこもった1年2組の男子たちの根底にあったものは「全共闘に似た情熱」だったのではなかろうかと思いたい。まあ、何かを変えようとかいう気迫は少なくても、大人に向かって叛乱をしてるわけだから、似たようなもんだとは思うが。
別に私は学生運動に参加なんてしたことないからわかんないけど、きっと参加したことあったらあの頃を振り返って遠い目をしてさ、
 「あの頃って元気だったよなあ。大変だったけど楽しかったよ」
っていうんだろう。多分こいつらも自分の子供が中学にあがる頃には、遠い目をして
 「やんちゃしたよなあ」
と思うんだよ。すげえ仲間を持った自分を幸運と考えながら。
 そーいうのの疑似体験をさせてくれる、という話においては面白い小説だったね。
 さて。
 それが、映画になりました。
 本の主役は「菊地英治」。でも、叛乱を企てた2組のリーダーは「相原徹」。
 この相原くんがこれまたかっこいいんですよ。リーダーとしての風格がなんだかもう、あふれ返ってどうしようもない。他にもやたら機械に詳しいヤツとかいたけど、男子22人全員そろっての叛乱でありたいじゃないか。
 とりあえず、映画は女子含めて11人だったよ。しかもあの力強い相原くんが、もっともしょぼい男になっていて度肝を抜かれたよ。
 人数はそろってない、女の子も参加してる、迷路を作らない、誘拐事件はない、汚職事件の生放送はない、安田講堂の思い出は絡んでこない、もともと工場で寝泊りしていた浮浪者にはほとんど触れてくれない(こいつがもの凄くいい味だしてたのに)ないないずくしの映画ですよ。
 まあそれもね。
全員を登場させると話がごちゃごちゃになるからとか、女の子も工場にいれてしまったのは話をまとめるためだとか、誘拐も汚職事件も話に絡めると複雑になるからとか、いろいろ理由があってはしょられてたんだとは思うよ。
 でも、はしょって話を再構成するなら、もっと他のやり方があったんじゃない────?と思われても仕方ない演出の数々だったと記憶してる。10年以上前、たった一回見ただけの映画で、うろ覚えもいいとこなんだが、とにかく
 「原作と違ってがっかりした」
というよりは
 「原作とかけはなれ過ぎていてうちのめされた」
という表現が正しかろう。
 子供心に、「何故こんなにクソ面白くもない映画作ったんだこんちくしょう」って思ったもん。マジで。
 それはさ、演出脚本が下手だったというのもあるだろう。かけはなれた話を作ったとしても、面白ければ満足したと思うもん。
 でも違う。根本的な話はそこではない。
 何故面白くないのか。
 作った奴が、本を読んだ人間(ここでは私)が最も重要視した部分を完璧に無視したからだ。
 本当にうろ覚えなんで違ったら申し訳ないが、映画でやたら前面に出たのは主役たちの通う中学校のやたら詰め込み式の管理教育と、少人数の仲良したちが他のクラスメートを誘わずに冒険をしてみた、ということだ。
 冒険だけでは駄目なんだ。
 大人と戦争し、打ち負かすことが大事なんだ。
 所詮子供のイタズラで終わらせては駄目なんだ。
 集団で団結して完璧に権力をへこませる爽快さが欲しかったんだ。
 唐突にたてこもって、男女入り乱れてちょっと人間ドラマがあって、工場に戦車あったから乗り回して、そんで最後に花火打ち上げましたよ、で終わってどうすんだよおまえら!!それでおまえらは何かを成し遂げたと言えんのか?!
 ────と、ここまで考えて。
 まあ確かにすごいことをしてるとは思うよ。ある意味勝ったんだろうよ。
 なのにも関わらず不満大爆発でぶつぶつ言いつづけたくなるのは何故なのか?
 例えばさ。
 七日間戦争の根本には、「駄目な大人と戦って結局勝てなかった安田講堂の大人たちが書き残した言葉、『我々以上の勇気ある若者が、解放区において、全日本全世界で怒涛進撃を開始するであろうこと』になぞらえて彼らが大人たちを負かしてしまう」というあの頃を生きた大人たちの夢が詰まっていたんじゃないだろうか?
 小説内で子供たちは大人たちをけちょんけちょんにしたわけさ。
 けれども、映画。
 工場内にたてこもった子供たちは、こともあろうかたまに仲間割れなんぞも経験しつつ、結局は大人たちの強行突破にやられてしまった────ような記憶があるのですが。
 やられてはないかもしれないが、それに近い状況で戦いを断念せざるをえなかったような。
 権力には所詮勝てないのさ、なんて笑われた気がした。
 なんといっても、もやもやだけが残り爽快感ゼロ。
 なんのために映画を作ったんだ貴様ら、喧嘩売ってんのかこのやろう、と私が思っても仕方ないと思うがどうか。


 自分の好きな小説や漫画が動画や映画やラジオドラマになるって嬉しいものです。
 動いている小説を見たいじゃないですか。
 私は今「屍鬼(小野不由美)」を一年くらいかけてねちねちドラマ作ってくれんかなと思ってます。あれは2時間とか10回とかで時間区切ったら駄目だろうと思って。もう、細部までねちねちと描くことで怖くなるカタストロフですから。
 でもできないでしょう。長いからね。
 原作付きで良かったなと思うのは、「リング」(飯田譲治が監督してなかったっけ?違うか)とか「ハーメルン」と「マサルさん」のアニメとかで、とかく少ない。みんな、そんなことない?アナザヘヴンも本見て映画見たらがっくりしたかもしんない。いかんせん本が長いからまとめるのに大変だったのだな、と思って五分というところか。
 そういうことで、映像化すればどうやっても質の低下が免れん、ということになるのなら、作るとき話の根本を大事にしてほしいと思ったのでした。
 ────えーと、的外れてるというか、何言ってんだか自分でもわからんのだが、表層のエンタテイメントじゃ駄目だよねという話か?七日間戦争の映画は「子供がイタズラする」という点に重点を置きすぎたがために起こった悲劇だったんじゃないか?もっと深いとこまで掘り下げることが必要だったんじゃないか?
 うろ覚えな映画に失礼かもしれないが、あの映画を見たときの私の落胆ぶりを想起するにこう分析したという話でした。
で、言ってることが壮大になってきたんで、ここいらでやめることにします。
 この文章、実は本編じゃないんでね。他のこと書くために七日間戦争ひっぱりだしたら、こんなに長くなったんで吃驚したよ、ということです。


 そんじゃ、本編に行くか。
 っていうか、本編のが短くなったら私はどうすればいいんでしょうか。


おわり。
戻る