B短距離レース出場

 記録度外視、ほぼ訓練のつもりで100キロ、200キロレースは行われる。
 勿論アラシや他のライバルたちも出場し、無事にレースを終えることができた。
 しかし300キロレースを前に次郎に思ってもみない不幸が襲う。────ピジョンタイマーが壊れたのだ。
 ピジョンタイマーとは何か?なんのことはない、要するに自分鳩が帰ってくる時間を計測する専門の時計だ。しかしこの時計が壊れてしまったら、レースに出しても仕方のないことになる。
 アラシは300キロには出せなかった。
 その後、次郎の持って生まれた強運みたいなもんで、中古だけれど立派なタイマーを手に入れることに成功したのだが、連合会クラブ代表の山南さんは次郎に衝撃的なことを話す。っていうか、聞く限りには当たり前のことなのだが。
 300キロの次は急に500キロと距離がながくなる。200キロまでしか知らないアラシが500キロレースに出て帰ってこれる見込みがあるだろうか?いや、ないだろう。だから今年のレースは全部見送り、来年出しなさいというのだ。
 次郎にそれが待てるだろうか?
 待てないから、訓練として300キロを飛ばして500キロレースに備えることにしたのだ。その訓練でトップの飼い主と鉢合わせてしまい、2人で放鳩訓練をすることになる。
 次郎は自分の無知さを怒られるが(天気図も書かずに放鳩するとか)、睦月くん根はいいやつなんで「今度から気をつけろよ」ということで許してやって鳩を放した。
 さて、この訓練によってアラシは(というより読者は)二つのコースを知る。阿武隈山地を境に海側(国道6号線側)を浜通り、陸側(国道4号線側)を中通りと呼び、中通りでの放鳩は嫌われているのだ。それは何故か?
 この中通り、いつも気象条件が悪く、ほとんど雨か雪が降っているらしい。いつもいつも雨が降ってるとは、全く珍妙としかいえない地域だが、そんな気候の場所を鳩が飛ぶのはさすがにつらかろう。
 が。
 今後この「浜通り」「中通り」は物語の重要な根幹となってくるので、みなさんにも覚えておいてもらいたいな、と思う次第でございます。