1.森山次郎、グレート・ピジョンに出会い、アラシをもらう。

 これがないと話が始まらない。
 鳩のことなんて何も知らない次郎は、ある日道端に落ちてきたレース鳩を拾う。
レース中に病気のために落ち、動けなくなっていたのだ。ジフテリアにかかって死にそうになっていたその鳩、次郎はなけなしの知識で懸命に看病する。
 その甲斐あって鳩は元気になるが、本当の持ち主・黒田老人が取り返しにやってくる。その鳩の登録番号は「0666」。グレート・ピジョン号という名前で、一羽200万円もするというすごい鳩だったのだ。
 病気を治してくれたことに礼を言い、とりあえずグレートはあげられないから、鳩が欲しいなら自分が持っている他の鳩一羽どれでもあげようと、黒田は言って帰っていった。
 次郎は勿論鳩をもらいに訪ねていく。
 しかし、やはりグレートに情が移っているのも手伝って、なかなかどの鳩にするか決められない。
 そのとき、ある光景が目に入る。
 ちょうど鳩の結婚の時期にあたり、グレートの子供(たまご)ができていたのだ。
 次郎は「グレート以外ならなんでもいいんですね?」と念を押し、まんまとその子供の片方をいただくことに成功したのだった。


 ところで黒田老人とは一体何者なのか?
 黒い立派な車を運転手つきで乗り回し、巨大な鳩舎に500羽もの鳩を飼い、それの飼育や訓練を運転手を兼任する使用人に任せている様子。
 いつ行ってもいるし、あるときは上半身裸で巨大なダンベルを持って訓練していた。
 働いているようには見えない。かといってあんだけの鳩を飼うにはそけなりの金がいるだろう。しかも何かのレースで賞品(次のレースでヘリに乗って鳩たちを追うというもの)がつくというので、怒ってもう一台ヘリをチャーターして上位者全員を乗せたこともある。
 この人って一体何者?