一休さんキャラに対する事柄・2


※以下、小坊主名は正しい漢字を知らないので平仮名です。

A色白小坊主の逆襲
 安國寺には小坊主が6人いる。一休含めて。
 どうでもいいことだが、この小坊主たちって結構影が薄い。小坊主が何人いてどんな顔だったか。それくらいならまだ覚えていられる。
 しかし、声とか、どんな人格だったとか、そんな話になるとちょっと私の記憶はおぼつかない。
 とりあえず、しゅうねんさん・ちんねんさんの二大巨頭は皆さんの記憶にあることと思う。この2人はまあ、一休を除く安國寺の代表だ。前者は桔梗やの一人娘・弥生さんにうつつを抜かしまくる破戒小坊主だ。大体にしてこいつが事件を起こすときは弥生さんがらみで、一休をこっぴどく裏切るものの、ちょっと窮地に立たされると「助けとくれよう」と一休に泣きつく卑怯者の嫌な奴だ。
 でも一休は兄弟子が相手の手前無下に断ることもできず助けてやる。その点は桔梗やにも当てはまることだが、今回は小坊主の話なので割愛しとく。
 で、ちんねんさんといえばもう、太り気味の食い意地小坊主だ。
 とにかく「あ、おまんぢゅうだ〜」というセリフは耳に残る。
 この人の頭の中には饅頭しかないわけね。ああいう時代の寺に、何故あんなにも饅頭が舞い込むのかはよくわからんが、彼の原動力がその辺に置かれていたことは間違いないだろう。
 で。
 その他に3人ほど小坊主はいたじゃないですか。
 その人たちについて覚えていることはありますか?
 名前は覚えてるんですよ。もくねんさん、てつばいさん、てっさいさん。
 前者2名はもう、どっちがどっちかってことすらよく分からん。
 多分もくねんさんの母だか婆だかが、「もくねんは凄いとんちで京都で大人気」という嘘を信じて上京してくるので、母にいいところを見せようと「一日だけ一休と立場を変わってもらってとんち問答大会をして勝とう」という話があった。勿論母にはバレるし、けれど「おまえが元気ならそれでいいよ」といういい言葉で母は帰っていくのだが、こんなエピソードぐらいしか覚えてない。
 あと一つ、一休の母が近くにいて、自分たちに仲の良さを見せつけるので、みんな母が恋しくなって遠い道のりを勝手に家に帰りかける一騒動とかもあった気がする。ちんねんさんは一休のいらん親切で母に会いにいけると騙されて、山の中で遭難しかけて大変な騒ぎになったこともあった。
 …っていうか、みんな母がらみじゃん。
 まだまだみんな修行の足らない子供ということだよね。
 しかし。
 ここまできても未だエピソードの出てこない小坊主が一人いる。
 それが今回の主役となる小坊主・てっさいさんその人です。


 が。
 てっさいさんって、実は意外と有名だったりする。
 しかしその有名の観点というのが、「妙に色の白い人がいた」「背の高いかっこいいのがいた」という程度で、はっきりと彼の名前やまつわる話を覚えている人は少ない。
 印象の通り、てっさいさんは色が他の人と比べて白い。
 年齢的には10代後半だと思われる。
 しゅうねんさんが一番上だと仮定しても、恐らく入門時期が前後しただけで、2人の年齢はどう考えても同じくらいだ。むしろ弟弟子であると思われるてっさいさんの方が、僧侶ランクとしては高そうに見える。まあ、それはどっちでもいいのだが。
 そして6人の中で最も顔の造作が整っているのがこの人だ。
 「一休さん」の再放送は私の記憶の中では3回くらいあった。
 最初てっさいさんの記憶はない。印象が薄いのに、単純な幼児の記憶にそうそう簡単に残らんだろう。それは2回目の再放送にもあてはまる。
 しかし、3回目は違う。私は高校生だ。
 自分にとってのどこがツボかもわかるし、今までの記憶に無かったエピソードも覚えていられる。そして導き出される結論は、「小坊主の中で最もかっこよく、最も漢らしいのは、色白ノッポのてっさいさん」という事実だ。
 安國寺に所属する小坊主の中で、人生の背景が最も深く漢らしいのは彼だ。
 それは以下の事実によるものである。


・彼はもともと武士であり、しかも落ち武者であった。


────こんだけなんですけどね。
 彼が落ち武者だってことに気付いている人ってどのくらいいるんでしょうかね。私の記憶としては、彼の落ち武者話は2回しかなくて、どちらもがちょっといろんな意味で衝撃的だったので記憶に残っているのですが。


@友人がちょっと変
 てっさいさんって影薄いのに、主役に抜擢されるとかなり濃い役を演じてくれてた。
 回想シーンはこんな感じだ。
 時代的には南北朝統一直後ということで、てっさいさんは南朝方の武士だったのかもしれない。戦に負け終われたてっさいさんは、山の中をはいずりまわりそして、一軒の家に辿り着く。
 このとき2人連れで、疲れきった体で、とりあえず脅してでも寝る場所や食べ物を確保しようという気分満々。その家の中に転がり込んだ2人は老夫婦を脅して食料を要求する。
 で、その家が何故か、豆腐屋だったのだ。(多分ね。私も記憶が曖昧だから。曖昧ならこんなもの書くなって感じ?まあいいじゃん)
 老夫婦は豆腐を食べさせてあげた。
 それがどういうわけか、ものすんごく美味かったらしい。
 落ち武者がどういうわけか改心して、豆腐屋になろうと決意するくらいに。
 ────っていうかさあ、腹へって死にそうになりながら、山道をかけずり回ってここまできたわけじゃん?不安とか焦燥とかの中で一時だけ見つけた落ち着く場所。そして出された豆腐。
 美味いに決まってんじゃん。
 空腹は最高のスパイスだと言ったのは誰だったか。
 てっさいさんの連れは、とりあえずもう、「この豆腐は美味い。俺様は今開眼した。豆腐屋になるぞ!」と決意し、その場で弟子入りを志願する。
 勿論てっさいさんは止めたさ。
 何言ってるんだ、自分たちの上司の仇をこれから討たないといけないんだから、そんな豆腐作ってる場合じゃないだろう、と。
 しかし武士を辞めたと言ってもそこは漢の言うこと。
 連れは頑として説得に応じず、そのまま豆腐屋に残って修行することになった。
 「美味い豆腐が作れるようになったらまずお前のところに持っていくからな」、という言葉を残して。
 そしてある日、胡散臭い豆腐屋が、
 「これを」
とかなんとか言って安國寺に豆腐を置いていく。
 てっさいさんは勿論、あの時の連れが立派な豆腐職人になったのだと気付いたさ。
 しかし、どちらも自分たちの素性を語り合うことなく、豆腐を食し、分かれていく。
 お互い立派になったな、という感想を胸に抱きながら……。
 くーっ、漢らしいーっ。


A復讐ごっこ。
 一休はある時、おかしな現象に気が付いた。
 安國寺の裏山の方で、何かがピカッピカッと光るのだ。あんなところに光るものなどないし、おかしいなあと思っているうちに、何故かてっさいさんの態度がおかしくなってくる。何かを隠しているようだ。一体何を────


 てっさいは、何かが光ったとき、裏山に登っていった。
 そこには、昔の落ち武者仲間がいた(勿論豆腐屋とは全くの別人です)。
 武闘派のそいつは、てっさいさんに向かって熱く語りかけた。
 「いつまでこんなところにくすぶっているつもりだ?この弛んだ世の中だからこそ、領主様の仇を討つチャンスだ」
 ────昔の亡霊が、今の将軍に敵討ちをしよう、と言っているのだ。
 勿論てっさいさんは今の小坊主生活になれている。慣れているっていうか、むしろそれでいいと思っている。
 けれど、昔の仲間が目の前にやってきて、「今が決起のときだ。立ち上がろう」とか言われると拒否するよりも何よりも、仲間だからこそ助けてあげたいという気持ちが先にたつのではないだろうか。
 てっさいさんは悩んだ。
 そして回答を保留している。
 武闘派は、
 「わかった。またここで合図を送る。その時おまえがここに来てくれなかったら、俺は一人でも行く」
みたいなことを言った。ピカピカ光ってたのは、彼らが昔使っていた鏡の反射を利用した伝令用の合図だったらしい。
 てっさいさんは承諾し山を降りた。
 しかし、そのことを一休は見ていた。そして「そんな恐ろしいことはやめてください」と止めに入ったさ。
 てっさいさんは、
 「これは俺自身の問題だ。一休に意見される覚えはない」
と言って、一人悩んでいく。
 結局てっさいさんは悩んだ末、復讐計画には加担しなかった。
 山で合図が見えたが、気持ちをこらえてそれを無視したのだ。
 辛かったろう、てっさいさん。


 上記二つのエピソード、私のうろ覚えで書いてるんで迫力伝わってこないかもしれませんが、大体こんな感じだったんですよ。
 なんかね、豆腐美味かったからって、豆腐屋になるとは飛躍しすぎだなあと思ったのと、復讐計画に誘われてぐらつくてっさいさんがかなり素敵だったことを記憶しているのですよ。
 他の人たちは影が薄い上に、「事件を起こす迷惑な人」「必要なときだけ一休にすがる嫌なやつ」とかとか、あんまりいい印象がないにも係わらず、てっさいさんだけは一線を画している。それは彼がもともとは武士だったことに由来しているのか、しゅうねんさんに比べて落ち着いているからなのか、はっきりしたことはわからない。
 けど、他の人たちと雰囲気が違ったことは事実。
 なんだか落ち着きないというか、幼稚というか、そんな安國寺の面々の中で、てっさいさんだけが異質の光を放っていたな、という話です。異質だったからこそエピソードが少なく、ほかの小坊主たちに溶け込まずに我が道を行っていたのかもしれない。
 考えてみれば、一休さんに助言わすることだってあったような感じしないか?
 しませんね。
 まあ、この色白小坊主は私の中で特別だというだけの話です。
 そんな感じ。


終わり

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