憧れのお天気ランドへ



 お天気ランドって聞いて何を想像しますか。


 気象庁の博物館っぽいっすよねえ。なんというか、歴代の災害ベスト10とか降水量何ミリ越えた地域ランキングとか過去何年間続けて晴れだった日の記録とか、生きていく上ではあまり意味のないことを大仰に発表してそうなところを想像しますが。
 まあ、ポンキッキにおけるお天気ランドって言ったら勿論、お天気5人衆が住んでる和やかな四季折々の動植物が楽しめそうな平和な土地ですよ。空中に浮かんでて、わさわさ雑草の生えすぎたラピュタのような。
 題名は忘れてしまいましたが、暫定的に「お天気ランド」という題名にしておきましょう。
 このお天気ランド、ポンキッキ内で放送される3〜5分程度くらいのアニメでした。ウゴウゴルーガにおけるノンタンの位置にいたのではなかろうか。別に見たことないけど。
 機関車トーマスとかポストマンパットは人形劇だったけど、あーいう時間枠のノリで、オープニングがあってアニメがあるという感じですか。
 私としてはえくぼ王子のアニメよりも、断然お天気ランドに燃えましたね。
 えくぼ王子は、そりゃあれば見るけど、あの教育然とした態度が嫌。あれって幼児を躾ようとする態度が見え見えなんだもん。「しましまとらのしまじろう」みたいな感じ?躾は自分ちでやってろよ。テレビでは感受性を育ててろよ、と常々思います。
 そーいうことを家でじっくりできないから、そーいう番組やビデオがはやってるんでしょうけどね。
 で。
 お天気ランドの何がいいかって、オープニング。これが一番。
 カラオケのDAMに入ってるから、「お天気ボーイズのテーマ」というやつを選んでください。ものすごくポップな曲調に紛れ、意味不明な言葉の応酬が続きます。前奏はテクノっぽいしね。さすがは音楽の集大成だ、なんでも利用するする。大体「お天気ボーイズだよ〜」という歌詞はまだいいが、何故その直後に「うふふふふふ」とか「えへへへへへ」とかいう笑いをいれるのか。通して見ると
 「お天気ボーイズだよー/えへへへへへ/お天気ボーイズだよー/うふふふふふ」
という歌詞になってます。これって歌うの恥ずかしいけど慣れると面白いんですけどね。
 歌詞から推察するに、お天気ランドというのは「ポッカリ浮かんだ雲の上」にあり、ハレタン・クモタン・アメタン・ユキタン・ゴロタンという5人のお天気ボーイズがひっそりと暮らしているらしい。
 まあこの歌、全コーラス聞くと間奏部分がなんだかすごい。
 「お天気ランド地方の明日のお天気をお知らせします。
 朝のうちは晴れ、ときどき雪、午後からは曇りのち雨あられ、
 ところにより雷が適当に落ちますのでご注意ください────なにそれ〜」

というセリフが入っている。確かに、なにそれ、だ。
 まあそんな、訳の分からん情報しかないお天気ランドだが、私としてこいつらに何が言いたいかと言えば、「是非最終回が見たかった」ということなのだ。



 大体主役はハレタンだ(晴れだからか)。アメタンは気が弱くおとなしい。クモタンの記憶は磨耗してしまったが、ゴロタンがガタイのいい兄貴肌で、ユキタンが異様に落ち着いた知恵袋的存在だった気がする。もう何年も前のことなので、正しい情報じゃなかったら申し訳ないのですが。ただゴロタンの声優は田中真弓でした。
 このアニメ、何故か再放送ばっかやってたのだ。
 よく覚えているのは、クモタンが病気になって(もしかしたらアメタンかもしれん)、弱っていくので何を飲ませてあげたらいいだろうとみんなで考え、結局翌朝早く、森の中にみんなでいって葉っぱについてた朝露を飲ませるのだ。
 病気の人はそれですっかり良くなってお礼を言った────という美談な話。これ何回も見せられた。もういらんというのに。
 こーいう思い出の通り、このアニメって、ポンキッキ内で放送されてはいるものの、唐突に打ち切られまた最初から放送し直し、また打ち切られ、また放送し………を繰り返しなんとか内容を進めてきていたのだ。
 簡略化されすぎた二頭身のキャラ、陳腐で臭い内容、まあある意味道徳的といえる会話の応酬(教育・躾的ではないということを付け加えます)、高校生が夢中になって見るもんじゃないが、それでも気に入っていたのですよ。
 そして、唐突に内容は急展開を迎える。
 この平和なお天気ランドに、突如悪者が襲来するのだ。
 悪者というか、存在としてはRPGにおけるラスボスみたいな存在じゃないかな。名前は忘れたが、タイフーンだかハリケーンだかみたいな感じで、そいつの部下がお天気ランドにやってきて、
 「すぐにこの地を明渡し我々の配下になれ」
と言い出すのだ。
 この土地が欲しいなら勝手に黙ってお天気ランドの端の方に家を建て、知らん間に森とか山とかを手に入れ、最後にお天気ボーイズをぶちのめして現在ここの大部分を所有してるのか知らしめた方が早いと思うのだが、どうもそういうわけにはいかないらしい。
 悪者ってのは意味もなく律儀だ。
 勿論そんな宣言に屈服する我らがお天気ボーイズではない。
 みんなの能力(雨降らせたり、風おこしたり、雷落としたりすることなのだが、やっぱサンダー系が一番強そうだよなあ)を最大限に発揮し、悪者をとりあえずは撃退してみせた。
 だが、これからが問題だ。
 相手は台風。晴れと雪以外の能力を兼ね備えている強大な魔物だ。
 5人の能力をあわせれば勝てるかもしれないが、やはり簡単には無理だろう。っていうか本当に、まだレベルの足りない勇者のパーティーが考えなしに魔王の城に突撃しようかって相談している感じ?これからどうしよう…というところでその回は終わる。
 で。
 次の日どうなるだろうって番組を見ても、お天気ランドやってねーんだよなー。また、クモタンだかアメタンだかが病気になる回に戻っちゃうんだよ。なにそれ。
 それでもいろんな苦難を乗り越え、悪者襲来の次の回になりました。
 また唐突に平和なお天気ランドに正体不明の女の子が紛れ込んでくるわけだ。この子がまた性格が悪く悪戯好きでヒネくれてて自分を閉じた、もうどうしようもない典型的な手がかかるけど何か今回のストーリーに対して重要な鍵を持ってるから仲良くしなければならなくなるだろうというのが見え見えの位置にある女の子なのだ。
 名前をフーコといい、強風を吹かせる能力を持ち空が飛べる。
 お天気ボーイズはなんとかこの悪戯女を捕まえようと思うが、結局捕まえることはできず取り逃がしてしまう。あの子は一体・・・と考えている上空でフーコは下をただ眺めているのだ。
 寂しそうにしてた気もするが、黒い影しか見えないお父さんに「あの国が欲しいか」みたいなことを聞かれてた気がする。
 それ見てというか、フーコという名前でもう、ヒネくれた私はわかりました。
 ああ、台風の子供ね。
 台風の子供でフーコちゃん。まだお天気ボーイズはこの子が何者なのか知らず、どうにかすれば仲良くできるだろうという甘い夢を見ているらしいが、その実は父から偵察を頼まれた優秀な女スパイかもしれんぞ。
 さあどうする、お天気ボーイズ。
 フーコの中には何か他に目的があるのか。
 今回の最大の敵「台風」さんは一体どういう作戦にうってでるのか。
 この平和だった大陸が血で血を洗う戦闘の舞台になっていくのか────話は最高潮に盛り上がってます。
 この先どうなるんだ。
 ドキドキしながら次回を待つのですが────この先を見たことないんですよねー。この先を見ないままポンキッキが消滅してしまいましたよ。
 ・・・全部見てから語れって思ってるでしょ。
 だってそりゃ無理な話ですよ。
 前述した通り、進んでは戻り進んでは戻りを繰り返すこのコーナー、完全に最終回を迎えたことは絶対にないですよ。担当の人が次の話の展開を作れないのか、それともどこも動画製作を請け負ってくれないのか、フーコの先の話を放送したことが一回もない。
 見たことある人は教えてくださいよ、ほんと。
 ────とまあこの通り、「最終回がどうしても見たいアニメ」として、このお天気ランドは記憶に残ると思う。
 だって、見ての通り凄い盛り上がりじゃないか、台風軍団侵略シリーズ。
 今までの和やかな道徳的作風を棚に上げ放置したまま、お天気ボーイズという名の勇者軍団がせまりくる魔手から平和な土地を守る勇者物語になっちゃってるよ。謎の女フーコは出てくるし、敵の親玉は上空からただ見下ろしてにやにやしてるし、そこいらのアニメと同じくらい興奮できるじゃないですか。
 ちきしょう、あんな中途半端なとこで終わらせやがったのはどこのどいつだ。


 そんなこんなでお天気ランドの話の続きを見たいなあと常々思っています。
 もしかして放送自体はされたんだろうか。・・・いや、いつ見てもフーコの登場で終わっていたんだから、作られてないはずなんだが。
 続き見たいと思いません?
 きっと血で血を洗うスペクタクルな展開になるはずなんですよ。
 おそらく兄貴肌のゴロタンはアメタンかクモタンをかばって討ち死に。嘆く全員に襲いかかる台風一家四天王の攻撃。無駄な争いはしたくないお天気ボーイズたちも、戦わなければ終わらないこの事態とゴロタンの仇をとらなければという気持ちで四天王たちと戦いつづける。
 戦いによって蹂躙されていくお天気ランド、そんな中ユキタンクモタンが命を落とす。
 やはり四天王相手だとそれぐらいの犠牲を覚悟しなければなるまい。
 残るのは見るからに弱そうで、何の必殺技を持っているのかも不明なアメタンと主役と思われるハレタンだ。
 魔王・台風の居城に乱入した2人は、そこでフーコに出会う。フーコは敵の娘であり戦わなければならない運命にあった。
 フーコに恋心を抱いていた(話を盛り上げるために勝手に捏造してます)アメタンは泣き虫のくせに「ここは僕に任せてハレタンは先へ行って」と叫び、ハレタンはそんなアメタンの心を汲んで先を急いだ。
 紅い絨毯の敷かれた階段の向こうにある茶色のでかい扉が勝手に開き、最終ボス・タイフーン(仮)が姿を現したのだった。
 まあいろいろあってハレタンは勝利するが、後ろには仲間たちの骸が重なるばかり。
 フーコは泣きながらアメタンをぶち殺したらしい。
 悲しみに暮れるハレタン、その時壊れた天井の隙間から日の光が差し込み、荘厳な声が聞こえ始めた。
 「よく頑張ったハレタン。これでお天気ランドの平和は保たれるだろう」
 神の声だった。
 褒美をくれるという声にハレタンは仲間全員の生還と、フーコがお天気ランドに来て平和に暮らすことが望みだと言う。
 神は願いを受け入れ、お天気ランドに平和が戻り新しい仲間が加わったのだった……。
 ────みたいな話になりそうじゃない?
 ありがち且つわかりやすい話の展開っしょ。
 見たいなあ。誰か作ってくんないかなあ。


 とりあえず歌だけでも聞いてみる価値はありますよ。
 お天気ランドに憧れつつ終わります。

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