ポンキッキ学習ビデオに関する傾向と対策
第五巻「どんななかま」
ポンキッキ教育ビデオ感想もこれで最後です。
そう、ビデオは5本セットなんで、5巻目の今回が最後ということになります。
たかだか5本分の感想書くのにどんだけ時間かけてんだってことになってますが、これでも年内に終われたってだけすごいことですよ!いやほんと。
そんなこんなで「どんななかま」と銘打たれたこのビデオ、でも実際見てみれば「どんななかま」ってタイトルはちょっとしっくりこない。
「どんななかま」というタイトルで、算数が主体の内容を考えると、当然メインは「仲間わけ」って映像になる。ような気がする。実際そういうスポットは盛り込まれていて、歌も「いっぽんでもにんじん」で締めくくるという基本に沿った正しい姿勢だ。
そう考えると別にしっくりこないってわけもなく、タイトル通りの内容なのじゃないかってことになるのだが────どうもなあ、私のこのビデオの印象は「仲間わけ」ってより「見かけの多少」になってしまうんだよ。
見た感じ同じっぽいけど並べてみると数は違う、みたいなそういう映像ばかりの内容。
何故なのかと考えて、わかった。確かにスポットは仲間わけが主流なのだが、ガチャピンムックによる寸劇が二つ入ってるうちのその両方が見かけの多少的内容になっていたのだ。
時間で考えればさして長い時間とってるわけでもないが、しかし、ポンキッキといえばこの2匹というくらいのインパクトを持つ彼らだ。
そっちの内容が印象深くなってしまっても致し方あるまい。
そんなわけで「タイトルと違うなー」と考えつつも、別段それでなんらかの不具合があるわけでなく、最後まで楽しく見させてもらいました。今回は「これは!」っていう見所はないけど、プゥちゃんにしろガチャピンムックにしろ安定したクオリティで魅せてくれたしバグナム星人は意外に可愛いし、「いっぽんでもにんじん」はやはり秀逸で、最後を締めくくる満足な一本となってることは請け合いです。
っつーことで、ラストの感想文いきます。
よろしくお願いします。
1.ガチャピン・ムックのみかけの多少
ジャングル探検をしているガチャピンムック。
腹が減って辿り着いた広場にはオレンジっぽい実のなった木が2本はえていた。
2人は喜び、お互いそれぞれの木の実をとることにしたわけであるのだが────。
ってことで、2人の間に生えてる木が問題の木。片方は固まって実がなってて、片方はばらけてる。ムック側の方が多く見えるのだけども、実際全てを収穫して並べてみたら同じ数だった、というただそれだけの話。
数が違うように見えても、きちんと数えたら同じなこともあるよ!という話の王道のようなことになってますね。
ポンキッキ内のスポットでもこういう内容のは多くあって、このビデオにももうひとつスポットが入ってます。
しかしこういうのはアレですか。
並べてみたら案外同じという目の錯覚的状況、こうすれば本来の数がわかるという作業の過程、それを示すことにより子供たちの「そっちのお菓子の方が多いじゃん!」的な喧嘩を理詰めで大人しくさせることができるという一つの方法論を示唆してたりはしないのか。
しませんね。
んでも、算数ってより話し合いの方法のその一部っぽいなあと思ったりする。
・・・・・・まあ、この実の話については、「並べることができた」からお互いが納得できるわけだけど、じゃあ「並べられないもの」の間で争いが起きたときには一体どうすればいいのか?
その答えはビデオ終盤に再び登場する彼らが答えを提示してくれます。
お楽しみに!
────何言ってんだ私。
2.みかけの多少 一寸法師
前述した、もうひとつのスポットっていうのがコレです。
4人の一寸法師に対しお椀は3つ。普通に見れば一つ足りないというのは歴然だ。
こんなものわざわざ比べる必要はないじゃん────ってことはない。
この場合、双方の大きさが全く違う、ということが問題だ。一寸法師4人とお椀3つ、並べたときに使う空間は双方一緒なんですよ。ぱっと見に同じ幅とってたら同じ数かもしれんと思っちゃいますわな。子供は。
その辺の加減をわからせようという、なんかそういうスポットでした。
こんなスポット多かったよなあ。他のビデオにも入ってたし。
こういう学習って地道に数をこなしていかなきゃなんないんだよな。きっと。
3.プゥちゃん ウサギの仲間
ウサギが2匹遊んでるところにプゥちゃんがやってきて、「仲間に入れて」とお願いするも、ウサギの方は「駄目だよ、同じじゃないもん」と言い張り断固拒否の姿勢。そこでプゥちゃんは特殊能力を駆使し、自らの体を変えていく。
当初全く違う二者だが、手足が違うだの耳がないだの尻尾がないだのという注文をつけられるごとに、プゥちゃんはお望み通りの形に変化していく。そうしてウサギと全く同じ姿になって楽しく遊ぶ。そういう流れの話です。
ここでは、「この二つは違う」ということに加え、「それならどこがどのように違うのか」というとこにまで考えを発展させなきゃならん。冊子には「他と比べながらそのものの一般的な形を、視覚的に把握することが大切です」と書かれてありました。そーいうのが主題です。
まあでもね。
そんなことよりね。
プゥちゃんは可愛いし、変身能力はすごいし、この子は将来大物になるよ!・・・・・・って思わんか?
結局プゥちゃんを捜しにきたニャンさんが、「ウサギさんの好物をあげよう」と人参を配り、それで正体がばれちまうということにもなるんだけどね。姿も元に戻るし。
でもオチは、「違っても仲良しー」って遊ぶ3匹の姿です。
仲良しが一番。
見かけがどうとかこうとか、仲間わけがどうのこうのってより、ラストの「同じ仲間じゃないけど仲良し〜」っていうウサギの一言の方が生きてく上で余程重要なことですよね。道徳だよプゥちゃん。
勉強になるなあ。
・・・・・・と思いはしても、上手くいかないのが人間ですが。
4.仲間わけ 男女
最初ばらばらに一列に並んでるこの絵と字、音楽とともにひとりでにわかれる。この後には字と絵という種類で分かれたりもする。
でも、ナレーションに入る言葉は一つ。
「なぜ〜?なんでこんなふうにわかれたんかな〜?」
答えは言わない。
疑問のみ。
答えは画面の前のみんなに考えて欲しいってことです。「考えさせる」ためにそこで話をぶったぎってるわけだ。
しかしそんな小技が効いてるねーって話より、このスポットの曲がかっこよい。「さあ、さあ、さあさあさあさあ」って掛け声が素敵だ。
やってることはどうってことないんだが、音楽が良くて見入っちゃうよな。ちくしょう、ポンキッキの真髄ってやっぱこの辺にあるんだろうなあ。
5.系列化 形
形の違う3つの図形が順番にゴム飛びしていく。
途中で順番としては違うものが現れ、「順番違うんじゃない?」とつっこみがはいり正しい順番に戻る、ただそれだけのもの。
簡単なんだがぼんやりしてたらどんな順番だったかさっぱり覚えられないんで、なんとなく、これは子供でなくとも大人の方も脳の活性化に役立ちそうなそんなスポットですよ。
まあどっちかって、ゴム飛び用のゴムが、人間とも人形ともつかないものの胸あたりからにょーっと生え出ていて、「そのゴムどうやって持ってんの?っていうか生やしてんの?!」っていうあたりの方が気になりすぎるって言えばそんな感じです。
あれは一度見ると不思議すぎて目が逸らせん。
脳も活性化する。間違いなく。
6.仲間わけ(多元分類)
(以下、冊子抜粋)
バグナム星の幼稚園児が2機のロケットに乗って遠足にやって来ました。
どんな形にわかれるの?色・形・足の数?
あれこれ迷っているうちに、空にポッカリお月様。
もう夜になってしまいました。また、明日考えましょう。
・・・・・・・ということで、上の赤いのと白いのがバグナム星人。ちなみに、抜粋の文ってなんかおかしい。遠足にやってきたんじゃなくて、今から行くんだけど2機のロケットにどう乗ろうって話のはずなんですが。
で。
バグナム星人、色と形と足の数がそれぞれ微妙に違うんで、その違いでもって乗り分けようとするのだが、どう分けても結局納得いかずに出発できない。
分類基準がそんなにもあるってのが困ったものだ。
しかし実際、もうそんなんどうだっていいじゃあねえか、早く飛びたてよ!と思うのだが・・・・・・・・そういうわけにもいかんのだろう。っつーか、右図の疲れきった4人があまりに可愛くて何も言えなんだ。
ああもういいよ。明日でも明後日でもじっくり考えて遠足に行きやがれ!
可愛いなあ、しかしアホだなあバグナム星人。
何かくいしんぼんを思い起こさせる。そこまで駄目でもないか、バグナム星人。
っていうか、どっからこんな名前持ってきたのかなバグナム星人。
7.仲間わけ 色と形
黄色の三角・ピンクの三角・黄色の丸・ピンクの丸のブロックを形別・色別にわけます。
パジャマ男爵が。
・・・・・・パジャマ男爵て!
別段映像中に名前がでるわけでなく、ブロック重ねて悦に入ってるだけの人なのに、「パジャマ男爵」って名前がついてることがもう、なんていうか、ツボ。パジャマ着てるからってそりゃないだろっていうより、男爵ってことはこいつ貴族様だったりするのか?
この微妙にセンスがたまりませんな。
図形やら色よりもそっちのが気になるわ。
そして重ねるたびに男爵が指差し確認するんだが、そんときの「ピヒョーン(音、右肩下がり)」みたいな音が小気味良くてイカす。
さすが男爵、やってることがお洒落すぎる。
えーと、少し性質の違うモノを分類する力、そういうのを学ぶのに重要なスポットです。
黄色の三角はピンクの三角にまとめるべきか、黄色の丸へいれてみるべきか。二つの可能性があり、臨機応変に対応したいものです。
ためになりますよ!もう。
8.系列化 大きさ
赤紫色っぽいゾウが3匹いた。
大きいのと中くらいのと小さいの。
大きい順に並んで!というので並び、その体をスライドさせたとき、今までゾウがいた位置に出現したのは────なんだか長細い、赤紫色の丸だった。
・・・・・・・・・う、うんこ?
なんかそんな感じでした。
これって逆バージョンもありそうだよな。小さい順に並んで!って。
9.ジュースの量
まだジャングル探検を続けるガチャピンムック。ゴリラにあったのもこの森の中なのだろう。
歩き回って喉はカラカラ、しかし飲み物であるジュースはもうガチャピンの持つ水筒一つきりしかない。
ガチャピンは公平にわけられるように、と目盛り入りのカップを取り出し量を計った上でそれぞれのコップに注いだ。
ガチャピンがだ。あの手でだ。
写真で見るとあんまどうってことないが、動きを見てるとかなりはらはらさせられる場面だった。あの手な上に顔でかいし、ものすげえ注ぐのに苦労してんのがよくわかる。あれってきっと一発でOKは出てないよなあ。
まあそれはいいや。
ガチャピンは細長いコップ、ムックは寸胴なコップ。
見た目に前者の方が多く入っているように見えないこともない。いや、そりゃね、ちゃんと計ってるしコップの形違うから量が違うように見えるだけだと大人にはわかるが、子供にはわかりづらいことなんだろう。
お互い全部飲み干した後、ムックが「ガチャピンの方が絶対多かった!」と文句たらたら。
さすがムック、食いしん坊は伊達じゃない。
その意見にガチャピンは半ギレし、「じゃあもっかい計るからね!」と自分のコップにジュースをいれ、それをムックのコップに注ぎこんだ!
当然、同じ量しか入らないんだから、いれるジュースが溢れるわけもない。
ムックも「形が違うからこんな風に見えるんですねえ」と納得。問題は解決したのでした。
これって、ビデオ冒頭の話と類似していつつも、別物ではある。
前者が「並べられるもの」に対しこれは「並べられない」ものだ。液体の量を比べるときはどうするのか。容器の形が違うときはどう考えればいいのか、その答えのひとつがここに描かれているというわけだ。
形は変わるが量は不変。
そういうものも世の中にはある。
それを説明するのに、ガチャピンの不安すぎる手つきをあんだけ見ないといけないというのは・・・・・・正直見てるこっちはどきどきしすぎて仕方ありません。
あと、こいつらジャングル探検に来てるくせに、どうしてリュックの中からガラス製っぽいコップが現れるのか、それは不思議だ。壊れるよそんなの。
10.いっぽんでもニンジン
有名すぎるほどに有名な歌です。
これに対する解説が必要なのかっていうくらい有名なんで、何を言えばいいのか。
とにかくこの歌の秀逸な点は、その歌詞。
1〜10とちゃんと続くように構成を練られた名詞。
しかもそれは10にたどりつくとちゃんと1にもどるという親切設計。
そしてそれぞれにつく数詞がかぶることはなく皆違う。
これら全ての条件をクリアし、なおかつちゃんと曲にあってるっていうことがそうそう可能だと思いますか?
私には無理だ。
確かに一番と二番で同じ歌詞で、サビんとこだけ違うっていう(そう考えたらどっちがサビなんだかわかんないが)、何度も聞く分には飽きてくる作りな事は確かだ。
しかしね。
そこはそれとして、やっぱりあの歌詞はすごいよ。
算数としてでなく、国語としても、この歌はものすごく役立つと思う。大事にしていきたいものです。
────はい。
以上が、ビデオ5巻の内容でした。
それぞれにテーマがあるから、やはり内容はそのテーマに沿わないといかんということで、期待してたスポットが入ってないってこともあり不満の残る点もあるにはありましたが────これだけのものを見られたっていうことを考えれば、そんなに悪くないものでもありました。
全体的に物足りないが、でも悪くない。微妙なのだが、いいものだった。
そんな全5巻でした。
ところで5巻の内容、こうして並べてみると、大半が「仲間わけ」だよな。
タイトルに反してない作りなのになー、やっぱり「見かけの多少」がメインに思えんだよなー。ほぼトリにジュースのヤツがきてるからかな。インパクトに加えてラストあたりに持ってくれば、どうしても印象は強くなるもんな。
そういうことにしておこう。
で。
なんだかんだ言ってもポンキッキは幼児「教育」番組なんだと実感した。
思い出の中では単なる娯楽なのだけど、こうしてじっくり見てみれば「教育」ってのがよくわかる。単にこのビデオが「教育」的なものを選り集められてるから余計にそう感じるんだろうけどさ。
「教育」って冠されると、どうしてもちょっと引くよね。誰だって勉強はあんま好きじゃない。
でもポンキッキでのその教育は、手を変え品を変え工夫されてて、無理矢理にでも注目させ飽きさせないようになってた。楽しかった。たまに度肝抜かれた。別にもう、こんなもん見なくてもいいほど成長してたってのに虜にされた。いやむしろ、プゥちゃんに関しては、いつになってもためになる話の連続だったのではないか。そりゃ幼児は余計に目がはなせんよな。
突き放しつつも楽しませてくれる。そういう部分は大いにある。
絵もそうだし、音もそう。音は注目を集める要素としてはかなり大きかった。
工夫を凝らされた勉強と、本当に単なる娯楽が渾然一体となり、ポンキッキは成り立ってたんだろう。きっと。
そうでないと30分、見続けられんよな。
改めて考えさせられるビデオの75分間でした。
ん?
・・・・・・75分か。
多いように見えて少ないよな。
もっとたくさんのスポットを収録したDVDでも出ればいいのに・・・・・・・・・と考えつつ、ふと冊子の最終ページを見ました。
そこには音源協力会社という文言。
連なっている名前の数々。
ビクター音楽産業株式会社、キティレコード株式会社、アポロン音楽工業株式会社
日本コロムビア株式会社、キングレコード株式会社、株式会社フォーライフレコード
東芝EMI株式会社、テイチク株式会社、株式会社ナムコ
ワーナー・パイオニア株式会社、株式会社徳間ジャパン
合計11社。
どれもこれも聞いたことある名前だな。
たった五本、75分のビデオの音楽協力にこんだけの会社。
全体を考えるならもっと多くの人々が関わったんだろうなあ。
・・・・・・・・・そりゃ、ポンキッキ歌ビデオが物理的に不可能っぽいわけだよ。
じゃあラストだし、ここらでまとめという名の謝意。
ポンキッキに携わり、神がかり的な映像・音その他を残してくれた偉大な関係者各位に感謝します。
出会えてよかった。
昔の人はすごかった。
かないません。情熱その他いろいろに。
私もすごくなりたいものですが────一人ではこれはできない。横の繋がりもいるのじゃないか?私にゃ仲間がいないからなあ。無理だな。いや厳密には、いろいろとこう、思うところがあったりなかったりで仲間作るのが不可能なわけですが。
そしてここまでお付き合いくださったみなさんにもお礼を。
半ば投げかけてたここをそれなりに継続していけてるのはみなさんのおかげです。ありがとうございます。
さて。
ビデオ感想も今回で終わり。
いよいよ違う方面に方向転換するときがきたようです。
っていうか、ネタは公開してんだからそれするしかないんだよ。考えなきゃ。
ポンキッキが終わってしまってほぼ15年。記憶を頼りに突き進んでまいりまして、今後もその多くを記憶に頼りながら続けていくことになるでしょう。
相変わらずこんな調子ですが、愛想つかされてなければ今後ともお付き合いください。
じゃ、また次回。
2007年9月23日