はたらくくるまには
もう少し選択肢はあったんじゃないのか?

 私が文章を書くときの原動力はその対象に思い入れがあるか否かだ。
 思い入れっつーのはまあ好きだからというのもあるが、逆に何か書きたくなるほどムカつくとか嫌いとかいうこともある。愛憎紙一重な感じで、好きなものについて書けるなら同じくらい嫌いなものについても書けるだろ、ということだな。
 で。
 今回のテーマについては残念ながら思い入れがあまりない(笑)。
 思い入れはないけどなんとなく気になったんで調べてみたというか聴き直してみて、んでもって何の深い考察もなく抱いた感想を並べてみたいというだけのことになると思う。多分。書きながら結末を考えるのでどうなるかわからんがね。
 何についてかって、「はたらくくるま」3部作についてだ。


 何度か語ってきたが、私自身は「はたらくくるま」という曲が好きではない。嫌いなのだろう。
 理由を問われればまあ今まで通り「単調な曲だから」「聞き飽きた」等のことしか言えない。こればっかりは私の嗜好の話になるので怒られてもどうしようもない。私の知る何人かも事実この曲をあまり好いではいないようで、理由は飽きたってことらしい。
 そりゃ飽きるよな。あれだけ放送されれば。
 それでも飽きたのは多分、「同じ曲調で3番まであってしかも3曲もあるから」という特殊事情があるせいで、例えば同じくらいの回数「ベロベロバア」が流れても私は嫌いにはなったりしなかったろう。逆に言えば「ベロベロア」くらいの起用なら嫌わなかっただろうということで、「飽きた」という点に関して言えば曲自体にいささかの悪いところもなかったはずだ。
 むしろ乗り物紹介歌を作った人たちはかなり素晴らしい能力を持っていると思う。
 最近になって気付いたんだが(遅すぎるけどね)、乗り物の歌って絶対一曲で12種類の乗り物を紹介してる。「はたらくくるま」もそうだが「ぼくはでんしゃ」も「そらとぶなかま」も一番に4種類3番までで計12種類というこだわりを見せている。
 私は「はたらくくるま3」についてはそれなりに評価していた。
 だって紹介する乗り物がマニアックというかおかしいじゃんよ。「それは車か?」というモノまで入ってるし、何かヤケクソめいた情熱を感じてちょっと楽しい。そんな娯楽作品として認識していたが、考えれば36種類の業務用自動車を並べたてるというのは結構大変なことではないか?とりあえず私には無理だ。
 曲についても全曲アレンジが違い、1はノーマル2は低め3は軽くてポップという特色を出しており、気持ち良いほど手抜かりが無い。
 ほんとはすごいモノだよな────と思っていた矢先に更なる衝撃。
 私が「はたらくくるま」を聞いたのはいつのことだか忘れたが、恐らく既に小学生も高学年という年齢で、幼児がこの曲に対してどういう反応をするのか知らなかった。
 勿論今だって知らないし、無論どういう思いで曲を聞いているのかなんて知る由も無い。
 ただ聞くところによれば、「画面をじっと見て」いて、「枕詞をふれば全ての車の名前を言える」らしい。幼児にとって「はたらくくるま」は「飽きやすい娯楽」ではなく、「見識を深める楽曲」なのだ。教育なのだ。穏やかでひっそりとしたポンキッキにおける「図鑑」なのだろう。
 ・・・・・・もう何を言っているのか分からなくなってきたぞ。
 とにかくそんな「はたらくくるま」に起用されたものを列挙してみようと思う。

  1番           2番            3番
はたらくくるま 郵便車         カーキャリア       フォークリフト
清掃車         パネルバン       ブルドーザー
救急車         レッカー車        ショベルカー
はしご消防車     タンクローリー      ダンプカー
はたらくくるま2 パトロールカー    幼稚園バス        ミキサー車
散水車         宅配車          耕運機
タラップ車       給食運搬車       ロードローラー
テレビ中継車     冷凍車          クレーン車
はたらくくるま3 リムジンバス      森林パトロールカー  衛星中継車
トーイングトラクター  田植え機         サファリバス
化学消防車       ポテトハーベスター  ボトルカー
タクシー         強力吸引車       リリーフカー

 以上36種。
 思ったのは「同種の車を固めてるのかな?」ってこと。例えば1の3番は土木系、3の2番は農業系とかまあ一括りにはできんけどもまとめらけてるような気がしませんか。
 それから目玉と言えば、徐々に破綻していく姿がうかがえるということか。
 最初はまだ一般的なものを歌ってる。こんなに正統派なものもないだろうってくらいだ。しかし次からはもうなんだかおかしい。いやおかしくはないのだが────なんかこうマニアックというか違和感がないか?いや別に問題があるわけじゃないが、給食運搬車って紹介するほどのものなのか?いやいや働いてるんだから紹介したっておかしくはないけどもなんとなくね、こう、もっと他にあるだろとか思うじゃん?
 で、ラストはもうヤケクソですよ。
 田植え機でありポテトハーベスターでありリリーフカーなのですよ。
 何故?
 いやそりゃ車じゃねえよとか、働いてないじゃんとか、もうそういうことは言いません。こんだけの数のものを並べるのって大変で、しかも10文字前後で紹介文を作らなければならないというところから、いかに作詞の人が苦労したかってのも想像できる。
 想像できたからこそ尋ねていいですか?
 すごいよなあ作った人・・・と思ってたけどもっと簡単な方法があったんじゃないのですか?
 例えば消防関係。
 4台も5台も紹介するのは忌避すべきことと判断したのかもしれない。だからこそ「はしご消防車」オンリーで突き進もうとしたのかなと思うが、3でいきなり「化学消防車」ときたもんだ。
 最も使われるポンプ車の立場はどうよ?
 んな特殊なものを攻めなくとも他にもあるじゃないか。
 バスにしてもそうだ。給食運搬車などという回りくどいものが許されるなら「路線バス」も起用できたのと違うか?3において「サファリ」「リムジン」の2台が同じバスなのに投入されてるんだから、3の2番に「路線バス」いれても違和感は無いと思うが。
 清掃車の表現が「街中綺麗にお掃除」となってるが、これはゴミ収集車のことだろうか。違うなら身近な車が宙に浮いてるかっこになるぞ。それともやっぱ朝の番組に「ゴミはまずいよ」ということにでもなってたのか。
 抽象的な車もある。
 パトロールカーとかパネルバンがなんだか一個の「はたらくくるま」としての紹介に弱いと感じるのは私だけなんだろうか。
 あとやっぱ、森林パトロールカーは普通乗用車に見えるから、どうしても「はたらくくるま」として表現されるのはヤなんだけど。これならうちの会社の社用車も働く車として紹介して欲しいものだ。「営業マン等乗り回すよ社用車」とかなんとか。
 そんなこんなで、考えればメジャーなものもまだありそうな感じで、微笑ましいヤケクソめいたモノに走らなくても良かったのじゃないかなあと思ったのですよ。ちらりと。
 やはりポンキッキとしてはそれなりの志があったんだろうか。
 「あのきたりの働く車を紹介してくなんてもう古い。今の時代はこれっすよ、マニアックな場所で頑張り耳慣れない名前のついた車たちっすよ。ありきたりなもんは既に子供もわかってるから珍しいものを並べた方が注目するし知識も豊富になりますよ」
とかいう意見でもあったのか?
 ちょっと気になるよね。

 でまあ、最後に。
 バキュームカーという名称は何故使わないのかね。
 ────そうなんすよ。
 最初なんで改めて聴いてみたかって、「バキュームカーって入ったってけ?」という疑問をもったからなんですな。「はたらくくるま」はどんどん変な方向へ行ったけど、実際は方向修正できたのではないかと、バキュームカーを軸に考えてみたんだよ。
 結果としてその名前はなかったけど「泥水吸い取る」ことのできる「強力吸引車」なるものが登場していた。
 これは要するにバキュームカーなのだろうか?
 泥水とは実は汚水のことなのだろうか?汚水っつーかまあぶっちゃけ糞尿ね。
 バキュームとは吸い取るっつーことでこのことだと思うが「泥水」という特定表現が気にかかる。
 もしかしてこれも「バキュームカー」とつけると朝の爽やかな時間に向かないという判断から外されたのか?パキュームと言えばやはり「便所」と直に表現するべきところで躊躇が生れ無視されてしまったのだろうか。
 気になりませんかね?
 すげえ気になる。
 こだわらなければもっとわかりやすい車で曲作れたのに。


 ────まあ、それもこれもどれもあれも、「わかりやすく」しなかったからこそラストの名曲が生まれたのだけどね。

おわり

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