問.   

今現在、両親はあなたにとって大切な存在ですか?


 これって、生涯の命題になりそうな問いだな。まあいいか。
 最近、とかく話題にのぼるのは、現代の家族の在り方とかいうヤツについてだ。
 なんかあれでしょ、一昔前とは社会の構成から違ってきてて、家庭内の力関係とかも変わって子供がキレるのはそのせいだみたいな。
 そりゃ言いがかりだろう。
 いや、勿論その説全部を否定するわけじゃない。私は世間一般にはもう大人という年齢で、現在の「キレる」とかいう世代の人間たちから半歩ずれてしまったぶん、彼らの立場なんてわかんないから断言なんてできやしない。
 ただ、非行形態が外向きから内向きになっていったのは知ってる。
 私のときだってキレる奴はいた。むしろ、私たち以上の世代が「キレる」という単語を造ったんじゃないか?恥ずかしい言葉でいえば「プッツンする」ですか?そんな感じ。
 俗に男性社会から女性社会へ変わっていったからだとか、文化がアメリカナイズされたとか、テレビとかの電化製品普及やバブル経済を通り越してきて家族の生活の時間帯がズレたとか会話がないとか、そういうところに今の状況の原因を求めるよな。
 いや求めるのは別にいい。きっとそうなんだろう。
 ただだからって、ガタガタ文句言って嘆くのはやめろと思うのだ。
 変わったんなら更に変えろ。そんなのは適当に子育てのできんかった結果を見て騒いでいるだけの話で、世の中の大半の人間は適当に子育て成功させてんだよ。世の中の少数派の場所へ行って「若者文化が乱れてー」とか言ってんじゃないよ。地方の多数派は結構純朴に普通に育ってんだよ。文句あんのか。
・・・いや、以前からテレビ番組の取材に対する、その偏り加減に文句言いたかったんでそんだけの話です。あんまり意味はないです。
 さて、そんな風に世の中が変わったってことは、番組内容の傾向も変化しているといえるのではないでしょうか。
 なにがって?
ポンキッキが。
 で、考えるわけですが、ポンキッキ内で最も時代の変化を見ることができるのはなんだと思いますか?
 私的にはやっぱり歌にいきつくわけですよ。
 ミニコーナーとかって、昔からずっと使いまわしてたりするじゃないっすか。追加されたとすると、妙にラップ調なABCの歌だろうか。国際化って感じがするでしょう。
 でもあとは別に、お姉さんが変わるとかトーマスが始まるとかお天気ランドが中途半端に再放送を繰り返すとか、そんなんばっかだ。だって、7年間番組を見てきて、直接的に両親に触れることってそうそうないんですよ。
 ファミリーコンサートをするか、いずみお姉さんが実家にガチャピン・ムックを連れて帰るくらいじゃないか?
だから、時代を追っていくのに何が一番適しているかってなると歌だと思う。
 で、その歌の中において、家族関係ってどう歌われているのか。
 それが今回のテーマです。


 とりあえず我が家について考えます。
 別に多分平均的な家庭です。私は父親を毛嫌いしているが、そんな子供は世の中ごまんといるだろうし、けれど多分大昔幼稚園児だった頃はきっと好きだったのだろうな、としばし感慨にふけったりもします。
 そうした子供が見る番組がポンキッキだったわけだ。
 ポンキッキはもう何年も前になくなってしまったので、その頃までの家族関係のあり方について歌われているものを思い出していきたいと思う。



@パタパタママ
 これは題名のまま、日本の母を歌い上げた迷作だ。
 要するに、朝から晩までお母さんは家事に追われていて、たまにはテレビとか見て笑うけど、夜七時頃帰ってくる旦那を待って暮らしているんだよという、前時代的家庭環境を歌い上げたものです。
 だってこいつ、
朝6時から起きて雨戸開けるっていうんですよ!
 ────いや、それは普通なのかもしれんが。
 まあ実際作られたのは一昔以上前の話だしね。そういった時代を反映していると思われます。
 家族のために貞淑な妻や優しい母親をやっている幸せな女の姿。・・・なんか幸福なんだか不幸なんだかわかんないなあ。個人的観点の話だからまあいいか。深く考えまい。
 今なら多分、朝起きて仕事行って夕方保育園に迎えにきてくれるよ、という内容になるのでしょうか。
 題名は「イライラママ」かしら。


Aおっぱいがいっぱい
 なんとも言えない歌だよな、これ。
 母性を表現しているのはわかる。母がどれだけ偉大かっつーことも理解できる気がする。
 しかし、なんとなく、エッチ★な気がしませんか。
 多分私の予想では、「もう一人赤ちゃん生まれるときはまた(おっぱいが)でるようになるのかな不思議」というフレーズが、曲の主題を表現していると思うんですよ。
 母性の神秘っすよね。
 けどもさー、
 「おっぱいがいっぱい、おっぱいがいっぱい、おっぱいがいっぱい、きれいだな大好きさ」
という歌詞は一体何?子供がそう表現しているのか?(この歌の一人称は一応小さい男の子らしいから)
 ちょっと間違うとただの痴漢?ととられる作品です。


Bメロンにきいてもわからない
 …っていうか、てめえの言ってることがわかんねーよ、と言いたくなる曲ですけどね、これ。
 前者二曲はかなり昔の歌ですが、これはもうポンキッキが衰退しつつあった時期に発表それたものです。製作側もやぶれかぶれだったのかもしれない。
 一応物語調になっていて、お母さんが風邪ひいて寝込んだからお父さんがメロン買って来てあげてお母さんは大喜びしたけど実はメロンはもらいものだったからそれは内緒ね、という話。
 この曲自体は意味不明です。画像も意味不明でした。
 父さんが息子に「内緒だよ」と言っても、息子はサビの部分で異様にリズミカルに「メロンにきいてもわからない〜」をただ延々繰り返しているだけなのだ。とりあえず、てめえが俺様にはわからんよ、という代物。
 でもまあ、大まかなラインとして、夫婦仲が良く家庭円満なんだな、という雰囲気。
 素直な母(軽く騙されているところが)、小市民的な父、そして僕、というほのぼのチックな家庭の味がします。


Cてんしのおしっこ
 これは問題作です。
 主人公は子供。
 ある日お母さんと買い物にでたら雨が降ってきた。
 お母さんは言いました。曰く、
 「これは天使のおしっこよ」
 が。
 二番、お父さんとキャッチボールしてたら雨が降ってきた。そのときお父さんは「これは神様の涙だよ」って教えてくれた。
 なんかね、お父さんの方が詩的っすよね。
 確かに題名として「神様の涙」より「天使のおしっこ」の方がコミカルだし幼児向けとして的を射ている気がする。題がそうなった以上、一番に天使のおしっこというフレーズを持ってくるのは当然の帰結だ。しかし。
 この歌によって、父・母の志向の軌跡がどういうふうになってんだか明かされちゃいましたね。
 雨がおしっこかあ。
 そんなネタ、くまの子ウーフだけで充分だと思うが、どうか。


 で、ここまできてふと思うことは、「父に関する歌が少ないかな」ということ。
 さらに、爺のものは皆無かもしらん。
 一曲、「日曜日のお父さんは怠け者だ」という意のものがあったが、題も歌詞も忘れてしまった。番組中でもあまり流されなかった(=人気が無い、必要とされていない曲と推測される)。
 あと思い当たる歌というと、

Dばあちゃん
 読んだまま、ばあちゃんについて延々語る歌。
 「足が冷たい」とか、ばあちゃんに関するイメージをただ羅列していくという、ある意味とてもイイ曲。

Eかいじゅうのうた
 弟はわがままで怪獣みたいなヤツだが、やっぱり可愛いもんは可愛いよな、という内容の歌。

Fこんこんこんのこぎつねさん
 動物だけどいれますわ。
 風邪引いた母さん狐のために、子狐が葉っぱ持って薬買いに行く話。しかも薬屋は「こいつ狐じゃん」と気付くのに、
 
「まいどあり〜」
と言って薬を渡すのだ。なんていい人。…いやいやいや、母さん狐のために危険を顧みず薬を買いに行く子狐って偉いよね。

Gようちえんにはいったら
 これはちょっとイレギュラーなものですよ。
 主役で、幼稚園に入園する兄は、妹にすごいと言わせてやったり両親を感心させたりしたいらしい。

Hかまっておんど
 これもちょっとズレてるけど、加えたいと思います。
 泣き喚く妹や、酔って帰ってくる父さんよりも、この僕にかまってくれないとぐれるぞ母親よ、という歌。

────そして、今回最後を飾るのが、ポンキッキーズ初期に使われた森高千里の曲。

Iロックンオムレツ
 私は個人的にこの曲が嫌いなのだが、一応歌いやすいのと、パタパタママよりは現代に沿った家庭の姿が描かれていると思う。
 夫婦の平和は、毎朝ママが作るオムレツをパパがニコニコしながら食すことによって保たれているという歌。私だったら朝からオムレツなんつーもんは食いたくないが、そうしないと平和でなくなるんだから仕方ないよな。
 夫婦の力関係が余すことなく語られている。
 「ママは愛情上手」であり「パパは愛され上手」なのだそうだ。
 ふーん。


 こうして全体的に見てみると、なるほど、全国平均的な両親像というか家族内の力関係、幼児の両親への関心度が示されるような気がしませんか。
 まず、幼児からの好かれ度として、母・父・兄弟姉妹・婆という形にならないか。
子供に好まれ、欲している曲を作り流すのが番組の基本姿勢になると思うから、頻度からして順序に間違いないだろう。
 そして、その中に存在する力関係。
 母は不思議な人であるが、決して詩的ではない。しかも、父を待ちながら騙されたりしている。
 一昔前。少し文学的なところの欠落した一般的母親は、家事を適当にこなしつつ愛する夫を待つだけの存在だった。
 だが、時を経るごとに母は待つだけの存在ではなく、父よりも権限が強くなっていく。
 土産買って来い!
 オムレツはニコニコしながら食え!
 父はそんな母に愛想ふりまきつつ、休日、疲れてだらだらしたい体を動かして子供とキャッチボールに興じるのだ。
 「ああ…雨だ。これは神様の涙なんだよ」。なんてつぶやきながら。
 泣きたいのは父かもしれない。
 泣きたいからこそ、こんなことを言ったのか。
 でもやっぱり、子供は母親の方が好きだし、そんな不思議な母にかまわれたいと思うのだ。
 そんなみんなの思いをのせて、地球はぐるぐると回っている。
 ────感動的ですね。



 〈ポンキッキ内両親取扱方法〉
 母は強く、父は一歩引いて。
 風邪をひいたらメロンをもらってこよう(ただし、もらい物ということは秘密中の秘密だ)。
 しかしそんなにつくしても、父は番組内で重要視されてはいない。
 こんな感じ?


以上


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