機関車トーマスの撮影過程を推理する。
私は遠い過去、部活動の一環で映画撮影に参加した人間だ。
といっても、家庭用ビデオで原始的な編集作業を行う、素人以下の知識しかないエセ経験者なんだけども、そんな私でもこの半分特撮まがいな番組がどう撮影されていたのかを想像するのはけっこう楽しい。っていうか、事情を全く知らないので憶測というより妄想じみているのだけども。
判りやすく考えれば、広いスタジオにところせましとセットが置かれ、いろんな技を駆使して機関車を走らせ貨車をぶっ壊しときには和やかときには殺伐とした物語を展開させているのだと思う。
だからさ、まず、撮影をするためにはセットが欠かせないんですよ。当たり前か。
必要なものをあげるなら、機関車などの乗り物系、ハット卿とかのソドウ島住民、そして至るところの風景素材だ。これだけのものを作るだけでかなりの金が動くはずだよな。
ま、とりあえず全編通して見てみると、風景の種類が実に多い。っていうか多すぎないか?
最初はまだ本線の一部でおさまっていたが、エドワードが支線を走り、トーマスは支線をもらいダックも支線にとんで、鉱山鉄道ができ石切り場で働く機関車があって港を作って利用する場面も増えていった。なにはさておき、この多様な風景を完成させねばなるまい。
あ、みなさん、ソドウ島は田舎だから、おんなじような森や沼や岩を配置してれば使いまわしできるじゃん、とか考えてませんか?
いやいやいや、そうは行かないんですよ?
どこにでもありそうな丘は「ゴードンの丘」と名づけられた。でも、このどこにでもありそうな丘は「ゴードンの丘」しかない。他に似た景色は登場せず、景色の開けた長い上り坂の丘は絶対に「ゴードンの丘」なのだ。
トーマスの支線の風景は独特だし、ヘンリーの森、ブルーベル鉄道、そこに到達するまでの景色、給水塔・信号のある場所、みなそれぞれ別個に作られているとしか考えられないくらい特色を持っている。似てるけど、どこか違う。
使いまわし、ということはまず考えられないと思う。だって見たらわかるもん。
それに恐らくバックの空やいい加減遠くの方の木々でない限り合成とは考えられない。列車は生身で走っていくし、土砂崩れなら本当に土砂が堆積しパーシーは埋まってしまった。本物の沼に飛び込んで沈むし、湛えてある水が合成であるとは考えにくい。基本的な模型に土を盛り、沼を作り、イミテーションの木々を植える。単純にこう考えるしかないセットと思った。
で。
じゃあこの多種多様なセットはどのくらいの規模なのか?
こりゃその土台に乗る登場人物たちの大きさから推測するしかないよね。
っつーわけで、ソドウ島の住人の平均身長は何cmか考えよう。
あまりに小さいと撮影になんない気もするし、でかすぎると逆に大道具係がつらくなる。ということで、レゴブロックに入っている人形の1.5倍と今ここで勝手に決めました。だからハット卿は7.5cmくらいとし、彼は機関士たちより頭一つぶん低いので島の平均身長は8cmと定義します。
「トーマスと魚釣り」において機関士たちが梯子に登り彼のタンクを覗くという描写から、梯子と人は1:1の割合の高さで、その梯子の一番上に立って中を覗くというところから機関車の高さは人の2倍+αと考えます。煙突は考えないことにして、高さは17cm。トーマスの横の長さは高さの2倍弱として30cmを少し超える程度だろうか。顔幅は6cmくらいじゃないかなあ。
そうすると、大型機貨車ゴードンはトーマスの2〜2.5倍強ありそうだから、横は75〜80cmくらいと考えていいのか?あれ?それは結構大きなものになるぞ。そんな彼らが簡単に乗れる転車台、自由に走れる本線と貨車置き場、何台も並んで入れる機関庫。巨大セットのオンパレードだ。
機関庫内部ならまだしも、合成を使うとしても外で走る風景はかなり後ろに引いて映ることもあるから、その車体と後ろに引く貨車や客車を含めた数倍の大きさのものをセットとして作らなければならないじゃん。
それとも機関車たちはかなり小さく作られているのだろうか?でも、ハット卿たちの顔とかを見る限り、あまりに小さいものだと逆に難しいように感じてしまうのだがけど。
えーっとね、ゴードンの丘で、貨車を引いた全長2mくらいのゴードンを長さ5、60cmくらいのエドワードが押してたシーンがあったから逆算して、最低でも一辺5m規模のセットになってしまうと思うんですよ。新しい駅は多分それよりも大きい思う。これって非常識な話になったりしない?
だって、考えてみてくださいよ。5m角くらいのセットが多種多様にスタジオに転がってるんですよ。転がってるというより放置してある、というか。作ったはいいが納めるところがありゃしねえよ。機関車が想像の半分の大きさなら話はまだ地味に終わるが、それだとハット卿が4cmないってことでしょ。そりゃいくらなんでも小さいよ。
ということでこの場合ありきたりに、「基礎を使い回せる不思議なセット」という結論はどうですか?・・・いや別に不思議ではないか。
解体は簡単、いくつかのパーツを自在に組み合わせることにより何通りもの風景を作りだすことも可能!・・・というどっかの旅館のお土産のパズルみたいな感じで。これだったら「巨大さ」という点を少しカバーできると思うのだが。
というのもですね、なんで「解体」を思うかというと、これには「機関車たちの表情」がからんでくるんですよ。
ハット卿たちも微妙にそうだけど、機関車たちは多くの表情を持っている。喜怒哀楽それぞれに3種以上はキープしてると思う。
加えて眠い顔驚きの顔恥ずかしい顔、出番が多くなるにつれてその数もまた増える。それぞれの顔で機関車一台ずつを作ってるって変でしょ。だから、車体は一つで顔の表面だけを腐るほど作ってんじゃないかな?と想像するわけですよ。
あとは着せ替え人形のように顔のすげかえをやってくわけだ。ちなみに、ハット卿は首のすげかえで。
あの顔の部分をぱかっとはずすと、目だけギョロリとした平面体になるわけだ。そこへぱちぱち、それはもうイブマインをつけるおばさんの頭から聞こえる「直接頭にボタンあんのか?」と思えるようなパチン、という音をさせてスタッフの方々が「機関車表情袋」から適当な顔をまさぐりだしてくっつけるわけですな。
その顔形もさすがですよ。全部違うもん。トーマスは一番ノーマルな感じ、ゴードンはいかつい感じ、ヘンリーは垂れ目気味、トビーはむくみ気味、オリバーは鼻がでかいし、ディーゼル系は大体四角で縁取ってある。顔のみで誰かわかるような造形をするってのもすごいですよ。
あと、たまに機関車が泣くんだけど、あの水ってやっぱりタンクの水が目に繋がってて、そこから搾り出すんですかね?あんなでこぼこした顔で水とか流してたら、拭くのもそうだが掃除するのってすごく大変だと思いませんか。私は思う。
あれって実際に走るもんだろうから(そして運転はリモコン等の遠隔操作としか考えられないが)、けっこう精密な作りをしてると思うんですよ。ラジコンみたいなもんじゃないのか?違うか?
ま、そこにでこぼこな顔をくっつけたりするわけじゃん。そうでなくとも掃除しにくそうなのに。勿論彼らは事故を起こすじゃないですか。貨車につっこむ、海につっこむ、んで土砂崩れのときはまるっきり土砂に埋もれて見えなくなる。「毛虫になったパーシー」なんか、黒蜜をかぶってべとべとになったあと、線路に落ちてた枯れ草が風に吹かれて車体にまとわりつきパーシーはもさもさになって駅にやってきました、って話ですよ。
────あれって撮影後どうしたんだろう。
石炭に埋もれる、程度ならまだなんとかいけそうだけど・・・・・・黒蜜ですよ。いや黒蜜をじかにぶっかけているとは思えないけど、要するにそうゆーベタつく系のものじゃん。なんか洗剤を溶かした水の中にぶちこんで丸洗いし、紐で括って天井からぶらさげて明日までに乾かそう、という方法しか思いつけん。
けども、そんな扱いをしてたら、精密なメカが傷んでしまったりするよな。風景セットが汚れたり壊れたりしても、それは壊れること前提に作ってあるわけだからいいけどさ。岩盤が落ちて砂に埋もれ埃が舞っても、もともと土で構成されていたところ、どーせ分解してしまうんだからまあいいかとも思える。
もともと分解して使用しているものだと思うし。
しかし機関車とかってそうはいかんでしょ?
この撮影風景を想像するにあたり、どうしてもそこだけ結論を出せないでいます。
セットはまあ大きくても小さくてもいいし、顔の変化だって付け替えてるんだと思えば納得もいくし。
────でも掃除は?
掃除はどうなんですか!あんなに精密そうな(車輪の動きとか目のくるくる回る具合がね)動きをするのに、じゃぶじゃぶ洗うだけだよ、と軽く返されるとなんか拍子抜けしそうです。
しっかしさあ、きっとカメラとかもいいの使ってんだろうね。
違和感なく空とかを合成できるような装置とか。水はってもOKなでかい水槽の調達とか。
私としてはくるくる目を回すとこだとか、走行中の車輪を横から映してるとことか、あーいうのがいーなあと思います。
やっぱ特撮はいいね。
?
・・・・・・トーマスを特撮だと思っているのは私だけなのか?
洪水で流されるトビーとか、鉱山でパーシーが落盤にあうとことか、特撮じゃん!!
ま、そゆことで。
終わり